商品売買の記帳方法は三分法以外にも分記法、総記法、売上原価対立法、小売棚卸法などの方法があります。
この記事では「三分法」と「小売棚卸法」の違いと仕訳の方法について説明します。
目次
小売棚卸法
小売棚卸法とは、商品の売買取引について「商品」「商品販売益」「繰延販売益」の3つの勘定科目を用いて処理する方法です。
ココがポイント
- 商品を仕入れた場合には、商品の仕入原価を売価に換算して「商品」勘定の借方に記入し、支払対価(原価)と売価との差額を「商品販売益」勘定の貸方に記入する。
- 商品を売り上げた場合には、売価で「商品」勘定の貸方に記入する。
- 商品の仕入時に、仕入れたすべての商品に対応する「商品販売益」を計上しているため、決算整理が必要となり、期末商品売価に含まれる販売益を「商品販売益」勘定から「繰延販売益」勘定に振り替える。
仕訳パターン
・仕入時
商品2,000円(売価3,000円)を掛で仕入れた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品 | 3,000 ※1 | 買掛金 | 2,000 ※2 |
商品販売益 | 1,000 ※3 |
※1 売価
※2 原価
※3 差額
・売上時
商品2,100円(原価1,400)を掛で販売した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売掛金 | 2,100 | 商品 | 2,100 ※1 |
※1 売価
・仕入値引
掛で仕入れた商品のうち300円(売価450円)の値引きを受けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 300 | 商品 | 450 |
商品販売益 | 150 |
・仕入返品
掛で仕入れた商品のうち200円(売価300円)を返品した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 200 | 商品 | 300 |
商品販売益 | 100 |
・売上値引
掛で売り上げ商品のうち150円(原価100円)の値引きをした。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品 | 150 | 売掛金 | 150 |
・売上返品
掛で売り上げ商品のうち450円(原価300円)の返品を受けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品 | 450 | 売掛金 | 450 |
・決算整理
期首商品棚卸高600円(売価900円)、期末商品棚卸高1,000円(売価1,650円)である。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
繰越販売益 | 300 ※1 | 商品販売益 | 300 |
商品販売益 | 650 | 繰越販売益 | 650 |
※1 900円-600円=300円
※2 1,650円-1,000円=650円
三分法
三分法とは、商品の売買取引について「仕入」「売上」「繰越商品」の3つの勘定科目を用いて処理する方法です。
三分法は「三分割法」と呼ばれることもあります。
ココがポイント
- 商品を仕入れた場合には、原価で仕入勘定の借方に記入する。
- 商品を売り上げた場合には、売価で売上勘定の貸方に記入する。
- 決算整理で売れ残り商品の原価を繰越商品勘定へ振り替える。
仕訳パターン
・仕入時
商品2,000円(売価3,000円)を掛で仕入れた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
仕入 | 2,000 | 買掛金 | 2,000 |
・売上時
商品2,100円(原価1,400)を掛で販売した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売掛金 | 2,100 | 売上 | 2,100 |
・仕入値引
掛で仕入れた商品のうち300円(売価450円)の値引きを受けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 300 | 仕入 | 300 |
・仕入返品
掛で仕入れた商品のうち200円(売価350円)を返品した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 200 | 仕入 | 200 |
・売上値引
掛で売り上げ商品のうち150円(原価100円)の値引きをした。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売上 | 150 | 売掛金 | 150 |
・売上返品
掛で売り上げ商品のうち450円(原価300円)の返品を受けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売上 | 450 | 売掛金 | 450 |
・決算整理
期首商品棚卸高600円(売価900円)、期末商品棚卸高1,000円(売価1,650円)である。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
仕入 | 600 | 繰越商品 | 600 |
繰越商品 | 1,000 | 仕入 | 1,000 |
小売棚卸法と三分法の違い
小売棚卸法 | 三分法 | |
使用する勘定科目 | ・商品(資産) ・商品販売益(収益) ・繰延販売益(負債) |
・仕入(費用) ・売上(収益) ・繰越商品(資産) |
決算整理仕訳 | 必要 | 必要 |
例題:小売棚卸法と三分法の比較
①仕入時
商品2,000円(売価3,000円)を掛で仕入れた。
小売棚卸法 | 三分法 | ||||||||||||||||||||
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②売上時
商品2,100円(原価1,400)を掛で販売した。
小売棚卸法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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③仕入値引
掛で仕入れた商品のうち300円(450円)の値引きを受けた。
小売棚卸法 | 三分法 | ||||||||||||||||||||
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④仕入返品
掛で仕入れた商品のうち200円(売価300円)を返品した。
小売棚卸法 | 三分法 | ||||||||||||||||||||
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⑤売上値引
掛で売り上げ商品のうち150円の値引きをした。
小売棚卸法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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⑥売上返品
掛で売り上げ商品のうち450円(原価300円)の返品を受けた。
小売棚卸法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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⑦決算整理前残高試算表(前T/B)
期首商品棚卸高600円(売価900円)、期末商品棚卸高1,000円(売価1,500円)である。
小売棚卸法 | 三分法 |
借方:商品1,650円
貸方:商品販売益750円、繰延販売益300円 |
借方:繰越商品600円、仕入1,500円
貸方:売上1,500円 |
(注)売掛金、買掛金は省略。
⑧決算整理
期首商品棚卸高600円(売価900円)、期末商品棚卸高1,000円(売価1,650円)である。
小売棚卸法 | 三分法 | ||||||||||||||||||||||||
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⑨決算整理後残高試算(後T/B)
小売棚卸法 | 三分法 |
借方:商品1,650円
貸方:商品販売益400円、繰延販売益650円 |
借方:繰越商品1,000円、仕入1,100円
貸方:売上1,500円 |
(注)売掛金、買掛金は省略。
⑩貸借対照表(B/S)
小売棚卸法 | 三分法 |
借方:商品1,000円
貸方:繰延販売益650円 |
借方:繰越商品1,000円 |
(注)売掛金、買掛金は省略。
小売棚卸法は決算整理後残高試算と貸借対照表とで「商品」勘定の金額が異なります。
貸借対照表に表示するときは、商品1,650円(売価)から繰延販売益650円を控除した1,000円(原価)となります。
⑪損益計算書(P/L)
小売棚卸法 | 三分法 |
貸方:商品販売益400円 | 借方:仕入1,100円
貸方:売上1,500円 |
(注)売掛金、買掛金は省略。
小売棚卸法、三分法のどちらで計算しても利益は同じとなります。
小売棚卸法:商品販売益400円(利益)
三分法:売上1,500円-仕入1,100円=400円(利益)
まとめ
- 小売棚卸法は「商品」「商品販売益」「繰延販売益」の3つの勘定を使用し、決算整理仕訳が必要。
- 三分法は「仕入」「売上」「繰越商品」の3つの勘定を使用し、決算整理仕訳が必要。
- 小売棚卸法、三分法のどちらで計算しても利益は同額となる。
小売棚卸法は、第68回(2018年)税理士試験の簿記論で出題されました。出題頻度は少ないですが、仕訳自体は簡単なので出来るようにしておくと安心です。
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