契約における重要な金融要素とは、契約の当事者が明示的又は目次的に合意した支払時期により、財又はサービスの顧客の移転に係る信用供与についての重要な便益が顧客又は企業に提供されることをいいます。
具体的には、割賦販売の金利相当部分や1年以上の期間を要する代金の後払いが、契約における重要な金融要素に該当します。
この記事では、消費税等を考慮する場合の契約における重要な金融要素に関する仕訳、会計処理について解説します。
目次
会計上の取扱い
商品引き渡し時
x1年4月1日、当社は顧客との間で、「商品の引き渡しから2年後に税込対価11,000円を支払う。」という商品の売買契約を締結し、同時に商品を引き渡した。
契約上は利息の対象とはなっていないが、信用供与についての重要な便益が顧客に提供されると認められる。対価の調整に使用される金利は1%とする。なお、消費税率10%とし、端数が生じた場合は円未満を四捨五入する。
当社(売手)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売掛金 | 10,783 ※1 | 売上 | 9,783 ※3 |
仮受消費税等 | 1,000 ※2 |
※1 11,000円÷(1+0.01)²=10,783
※2 11,000円×0.1/1.1=1,000円
※3 差額
顧客(買手)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
仕入 | 10,000 ※1 | 買掛金 | 11,000 |
仮払消費税等 | 1,000 ※2 |
※1 11,000円÷1.1=10,000円
※2 11,000円×0.1/1.1=1,000円
1年後
x2年3月31日、対価の調整としてx1年4月1日に引き渡した商品について金利1%の計上を行った。
当社(売手)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売掛金 | 108 | 受取利息 | 108 ※1 |
※1 10,783円×0.01=108円
顧客(買手)
処理なし |
2年後
x3年3月31日、x1年4月1日に引き渡した商品の代金11,000円を現金で受け取った。
当社(売手)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売掛金 | 109 | 受取利息 | 109 ※1 |
現金 | 11,000 | 売掛金 | 11,000 ※2 |
※1 11,000-(10,783+108)=109
※2 10,783+108+109=11,000
顧客(買手)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 11,000 | 現金 | 11,000 |
法人税法上の取扱い
会計上の取扱いと同じ処理です。
会計上の取扱い
商品引き渡し時
x1年4月1日、当社は顧客との間で、「商品の引き渡しから2年後に税込対価11,000円を支払う。」という商品の売買契約を締結し、同時に商品を引き渡した。
契約上は利息の対象とはなっていないが、信用供与についての重要な便益が顧客に提供されると認められる。対価の調整に使用される金利は1%とする。なお、消費税率10%とし、端数が生じた場合は円未満を四捨五入する。
当社(売手)
課税売上げの対価 | 110,000円×100/110=100,000円 |
課税売上げに係る消費税額 | 110,000円×10/110=10,000円 |
顧客(買手)
課税仕入れの対価 | 110,000円×100/110=100,000円 |
課税仕入れに係る消費税額 | 110,000円×10/110=10,000円 |
1年後
x2年3月31日、対価の調整としてx1年4月1日に引き渡した商品について金利1%の計上を行った。
当社(売手)
処理なし |
顧客(買手)
処理なし |
2年後
x3年3月31日、x1年4月1日に引き渡した商品の代金11,000円を現金で受け取った。
当社(売手)
処理なし |
顧客(買手)
処理なし |
具体例
下記の資料に基づいて、当社の仕訳を示しなさい。
<資料>
x5年4月1日、当社は顧客との間で、「商品の引き渡しから3年後に税込対価550,000円を支払う。」という商品の売買契約を締結し、同時に商品を引き渡した。
契約上は利息の対象とはなっていないが、信用供与についての重要な便益が顧客に提供されると認められる。対価の調整に使用される金利は2%とする。なお、消費税率10%とし、端数が生じた場合は円未満を四捨五入する。
【解答・解説】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売掛金 | 518,277 ※1 | 売上 | 468,277 ※3 |
仮受消費税等 | 50,000 ※2 |
※1 550,000円÷(1+0.02)³=518,277
※2 550,000円×0.1/1.1=50,000円
※3 差額
まとめ
- 商品の引き渡し時に消費税等を計上する。
- 売掛金は貨幣の時間価値を考慮し、割引現在価値で計上する。
- 売上は、売掛金と仮払消費税等の差額で算定する。