簿記

【工事契約基準は廃止】進捗度にもとづき収益を認識する方法による仕訳、会計処理について解説【収益認識基準】

2021年5月18日

2021年4月1日以後に開始する事業年度から、一部企業に対し「収益認識基準」が強制適用となりました。収益認識基準の適用により、工事契約の会計基準は廃止されました。

収益認識基準における工事契約の会計処理は、工事契約が一定の期間にわたり充足される履行義務に該当する場合、次の3つに分類できます。

1.進捗度にもとづき収益を認識
2.完全に履行義務を充足した時点で収益を認識
3.原価回収基準

この記事では、進捗度にもとづき収益を認識する方法による会計処理について解説します。



工事契約基準と収益認識基準との違い

工事契約基準と収益認識基準との違いは、簡単に説明すると「表現が変わったこと」「原価回収基準が追加されたこと」です。

  • 工事契約基準にあった工事進行基準のことを、収益認識基準では「進捗度にもとづき収益を認識する方法(一定期間で充足するもの)」といいます。
  • 工事契約基準にあった工事完成基準のことを、収益認識基準では「完全に履行義務を充足した時点で収益を認識する方法(一定時点で充足するもの)」といいます。
  • 工事進捗度の確実性が認められない場合で工事完成基準を適用していたケースは、「原価回収基準」で算定します。

収益認識基準では、契約に含まれる履行義務を「一定期間で充足するもの」と「一定時点で充足するもの」に識別します。

工事契約基準と収益認識基準の対応関係

工事契約基準 収益認識基準
工事進行基準 進捗度にもとづき収益を認識する方法(一定期間で充足するもの)
工事完成基準 完全に履行義務を充足した時点で収益を認識する方法(一定時点で充足するもの)
工事進捗度の確実性が認められない場合で工事完成基準を適用していたケース 原価回収基準

工事契約基準には、工事進行基準と工事完成基準がありました。 従来の工事契約基準では、工事の進捗部分についての成果の確実性が認められるには工事進行基準を適用し、認められない場合は工事完成基準を適用しました。 成果の確実性が認められる場合とは、「工事収益総額、工事原価総額、決算日における工事進捗度を合理的に見積もれる場合」です。

 

進捗度にもとづき収益を認識する方法

進捗度にもとづき収益を認識する方法とは、工事契約が一定の期間にわたり充足される履行義務であり、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができる場合は、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識する方法です。

工事進行基準の「工事契約に関して、工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を認識する方法」と同じイメージです。

 

工事代金の前受時

工事代金を前受けした場合、未成工事受入金勘定で処理します。

1.完成工事未収入金がない場合

借方 金額 貸方 金額
現金 xxx 未成工事受入金 xxx

「未成工事受入金」勘定は一般商品売買における「前受金」勘定に該当します。

 

2.完成工事未収入金がある場合

借方 金額 貸方 金額
現金 xxx 完成工事未収入金 xxx

 

未成工事支出金の集計

工事中に発生した原価(材料費・労務費・経費など)は、未成工事支出金勘定へと振り替えます。

借方 金額 貸方 金額
未成工事支出金 xxx 材料費 xxx
労務費 xxx
経費 xxx

 

工事進捗度の見積もり

決算日における工事進捗度の見積もり方法には、通常、原価比例法を用います。

原価比例法とは

決算日までに実施した工事に関して発生した工事原価が、工事原価総額に占める割合をもって決算日における工事進捗度とする方法です。

工事進捗度=決算日までに発生した工事原価累計額÷見積工事原価総額

 

工事収益の算定

決算時に、工事進捗度に応じた工事収益を算定し、完成工事高に計上します。
各期に計上すべき工事収益の金額は、工事収益総額に当期末までの工事進捗度を乗じた金額から前期末までに計上した工事収益を控除した金額です。

原価比例法に基づいた工事収益の算定は下記のとおりです。

1.第1年度における工事収益

完成工事高(当期の収益)=工事収益総額×当期末までの工事進捗度

 

2.第2年度以降における工事収益

完成工事高(当期の収益)=工事収益総額×当期末までの工事進捗度-前期末までに計上した工事収益累計額

 

3.完成引渡年度における工事収益

完成工事高(当期の収益)=工事収益総額-前期末までに計上した工事収益累計額

 

借方 金額 貸方 金額
完成工事未収入金 xxx 完成工事高 xxx

「完成工事高」勘定は一般商品売買における「売上」勘定に該当します。
「完成工事未収入金」勘定は一般商品売買における「売掛金」勘定に該当します。

 

工事原価の算定

借方 金額 貸方 金額
完成工事原価 xxx 未成工事支出金 xxx

 

具体例

次の資料に基づいて、問1から問3の仕訳を示しなさい。

<資料>

(1)x1年度

① x1年6月5日、当社は建物の建設工事に係る契約を締結した。工事契約は一定の期間にわたり充足される義務であり、履行義務の充足にかかる進捗度を合理的に見積もることができる。

② 当社は決算日における工事進捗度を原価比例法により算定している。

③ 当社の契約時における工事収益総額は80,000千円であり、工事原価総額の見積額は60,000円千円である。

④ x1年6月7日、工事代金の一部として12,500千円が当座預金に振り込まれた。

⓹ x1年度の発生原価は、材料費5,000千円、労務費7,000千円、経費3,000千円であった。

(2)x2年度

x2年度の発生原価は、材料費10,000千円、労務費12,000千円、経費8,000千円であった。

(3)x3年度

建物が完成し、引渡した。x3年度の発生原価は、材料費4,500千円、労務費7,000千円、経費4,000千円であった。

 

問1

①契約締結時(x1年6月5日)、②工事代金の一部受取り時(x1年6月7日)、③決算日(x2年3月31日)の仕訳を示しなさい。

 

【解答・解説】

① 契約締結時(x1年6月5日)

仕訳不要

 

② 工事代金の一部受取り時(x1年6月7日)

借方 金額 貸方 金額
当座預金 12,500 完成工事未収入金 12,500

 

③ 決算日(x2年3月31日)

(イ)未成工事支出金の集計

借方 金額 貸方 金額
未成工事支出金 15,000 材料費 5,000
労務費 7,000
経費 3,000

 

(ロ)工事収益の計上

借方 金額 貸方 金額
未成工事受入金 12,500 完成工事高 20,000 ※1
完成工事未収入金 7,500 ※2

※1 工事進捗度:決算日までに発生した工事原価累計額15,000千円/見積総工事原価60,000千円=0.25

完成工事高:工事収益総額80,000千円×工事進捗度0.25=20,000千円

※2 20,000千円-12,500千円=7,500千円
完成工事高20,000円のうち未成工事受入金12,500千円を充当し、残額を完成工事未収入金として処理します。

 

(ハ)工事原価の振替

借方 金額 貸方 金額
完成工事原価 15,000 未成工事支出金 15,000

 

問2

決算日(x3年3月31日)の仕訳を示しなさい。

 

【解答・解説】

(イ)未成工事支出金の集計

借方 金額 貸方 金額
未成工事支出金 30,000 材料費 10,000
労務費 12,000
経費 8,000

 

(ロ)工事収益の計上

借方 金額 貸方 金額
未成工事受入金 40,000 完成工事高 40,000 ※1

※1 工事進捗度:決算日までに発生した工事原価累計額(15,000千円+30,000千円)/見積総工事原価60,000千円=0.75

完成工事高:工事収益総額80,000千円×工事進捗度0.75=60,000千円 60,000千円-前期末までに計上した工事収益累計額20,000千円=40,000千円

 

(ハ)工事原価の振替

借方 金額 貸方 金額
完成工事原価 30,000 未成工事支出金 30,000

 

 

問3

決算日(x4年3月31日)の仕訳を示しなさい。

 

【解答・解説】

(イ)未成工事支出金の集計

借方 金額 貸方 金額
未成工事支出金 15,500 材料費 4,500
労務費 7,000
経費 4,000

 

(ロ)工事収益の計上

借方 金額 貸方 金額
未成工事受入金 20,000 完成工事高 20,000 ※1

※1 完成工事高:工事収益総額80,000千円-前期末までに計上した工事収益累計額(20,000千円+40,000千円)=20,000千円

 

(ハ)工事原価の振替

借方 金額 貸方 金額
完成工事原価 15,500 未成工事支出金 15,500

 

まとめ

  • 収益認識基準の「進捗度にもとづき収益を認識する方法」は、廃止された工事契約基準の「工事進行基準」に代わるもので、計算方法や仕訳は同じ。
  • 決算日における工事進捗度の見積もり方法には、通常、原価比例法を用いる。
  • 原価比例法とは、決算日までに実施した工事に関して発生した工事原価が、工事原価総額に占める割合をもって決算日における工事進捗度とする方法。

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