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【収益認識基準】原価回収基準による仕訳、会計処理について解説

2021年5月21日

収益認識基準における工事契約の会計処理は、工事契約が一定の期間にわたり充足される履行義務に該当する場合、次の3つに分類できます。

1.進捗度にもとづき収益を認識
2.完全に履行義務を充足した時点で収益を認識
3.原価回収基準

この記事では、原価回収基準による会計処理について解説します。



原価回収基準

原価回収基準とは、履行義務を充足する際に発生する費用のうち、回収することが見込まれる費用の金額で収益を認識する方法をいいます。(収益認識会計基準 第15項)

かかった費用のうち回収できると見込んだ金額をそのまま収益に計上するイメージです。

具体的には、工事の進捗度が不明の場合でも、当期に発生した費用が1,000,000円と判明していて、少なくとも、この1,000,000円は回収できると見込んだときは、原価回収基準による売上は1,000,000円となります。

なお、原価回収基準を適用した後に原価総額が判明した場合には、その時点で原価回収基準を終了し、工事進行基準を適用します。

工事契約基準と収益認識基準の対応関係

工事契約基準 収益認識基準
工事進行基準 進捗度にもとづき収益を認識する方法(一定期間で充足するもの)
工事完成基準 完全に履行義務を充足した時点で収益を認識する方法(一定時点で充足するもの)
工事進捗度の確実性が認められない場合で工事完成基準を適用していたケース 原価回収基準

 

工事代金の前受時

工事代金を前受けした場合、未成工事受入金勘定で処理します。

借方 金額 貸方 金額
現金 xxx 未成工事受入金 xxx

「未成工事受入金」勘定は一般商品売買における「前受金」勘定に該当します。

 

決算日の処理

原価回収基準では、履行義務を充足する際に発生した費用を完成工事原価に計上するとともに、回収することが見込まれる金額を完成工事高に計上します。

完成工事原価

借方 金額 貸方 金額
完成工事原価 xxx 材料費 xxx
労務費 xxx
経費 xxx

 

完成工事高

1.未成工事受入金がある場合

借方 金額 貸方 金額
未成工事受入金 xxx 完成工事高 xxx
完成工事未収入金 xxx

 

2.未成工事受入金がない場合

借方 金額 貸方 金額
完成工事未収入金 xxx 完成工事高 xxx

 

完成・引渡年度

完成工事原価

借方 金額 貸方 金額
完成工事原価 xxx 材料費 xxx
労務費 xxx
経費 xxx

 

完成工事高

工事が完成し、顧客に目的物を引き渡した時点で工事収益総額から既に計上した工事収益を控除した残額を完成工事高に計上します。代金の受け取りが引き渡し後の場合には、完成工事未収入金勘定で処理します。

1.未成工事受入金がある場合

借方 金額 貸方 金額
未成工事受入金 xxx 完成工事高 xxx
完成工事未収入金 xxx

 

2.未成工事受入金がない場合

借方 金額 貸方 金額
完成工事未収入金 xxx 完成工事高 xxx

 

具体例

次の資料に基づいて、問1から問3の仕訳を示しなさい。

<資料>
(1)x1年度
① x1年6月5日、当社は建物の建設工事に係る契約を締結した。この工事契約は、一定の期間にわたり充足される履行義務である。
② 当社の契約時における工事収益総額は80,000千円であり、工事原価総額は不明である。
③ x1年6月7日、工事代金の一部として12,500千円が当座預金に振り込まれた。
④ x1年度の発生原価は、材料費5,000千円、労務費7,000千円、経費3,000千円であった。なお、発生した原価については、全額回収できると見込まれている。
⑤ 決算日において、当該履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができない。

(2)x2年度
① x2年度の発生原価は、材料費10,000千円、労務費12,000千円、経費8,000千円であった。なお、発生した原価については、全額回収できると見込まれている。
② 決算日において、当該履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができない。

(3)x3年度
建物が完成し、引渡した。x3年度の発生原価は、材料費4,500千円、労務費7,000千円、経費4,000千円であった。なお、発生した原価については、全額回収できると見込まれている。

問1
①契約締結時(x1年6月5日)、②工事代金の一部受取り時(x1年6月7日)、③決算日(x2年3月31日)の仕訳を示しなさい。

 

【解答・解説】
① 契約締結時(x1年6月5日)

仕訳不要

 

② 工事代金の一部受取り時(x1年6月7日)

借方 金額 貸方 金額
当座預金 12,500 完成工事未収入金 12,500

 

③ 決算日(x2年3月31日)
(イ)完成工事原価

借方 金額 貸方 金額
完成工事原価 15,000 材料費 5,000
労務費 7,000
経費 3,000

 

(ロ)完成工事高

借方 金額 貸方 金額
未成工事受入金 12,500 完成工事高 15,000 ※1
完成工事未収入金 2,500 ※2

※1 当期に計上した完成工事原価と同額
※2 15,000千円-12,500千円=2,500千円

 

問2
決算日(x3年3月31日)の仕訳を示しなさい。

 

【解答・解説】
(イ)完成工事原価

借方 金額 貸方 金額
完成工事原価 30,000 材料費 10,000
労務費 12,000
経費 8,000

 

(ロ)完成工事高

借方 金額 貸方 金額
完成工事未収入金 30,000 完成工事高 30,000

 

問3
決算日(x4年3月31日)の仕訳を示しなさい。

 

【解答・解説】
(イ)完成工事原価

借方 金額 貸方 金額
完成工事原価 15,500 材料費 4,500
労務費 7,000
経費 4,000

 

(ロ)工事収益の計上

借方 金額 貸方 金額
完成工事未収入金 35,000 完成工事高 35,000 ※1

※1 完成工事未収入金:工事収益総額80,000千円-既計上工事収益(15,000千円+30,000千円)=35,000千円

 

まとめ

  • 原価回収基準は、履行義務を充足する際に発生する費用のうち、回収することが見込まれる費用の金額で収益を認識する方法。
  • かかった費用のうち回収できると見込んだ金額をそのまま収益に計上する。
  • 工事が完成し、顧客に目的物を引き渡した時点で工事収益総額から既に計上した工事収益を控除した残額を完成工事高に計上する。

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