残価保証とは、リース契約(所有権移転外ファイナンス・リース取引)において、リース期間の終了時に、リース物件の処分価額が契約上取り決めた保証価額に満たない場合、借手がその不足額を貸手に支払う義務のことをいいます。
この記事では、残価保証のあるリース取引について解説します。
目次
リース取引の開始時
リース資産の価額は、リース料総額に残価保証額を含めて、現在価値の算定を行って計上します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
リース資産 | xxx | リース債務 | xxx |
年間のリース料×年金現価係数+残価保証額×現価係数=リース料総額の現在価値
リース料の支払い時
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
支払利息 | xxx ※1 | 当座 | xxx |
リース債務 | xxx ※2 |
※1 リース債務×利率
※2 リース料-支払利息
決算時
残価保証額のない所有権移転外ファイナンス・リース取引は、残存価額をゼロとして償却計算を行いますが、残価保証額がある場合には、残価保証額を残存価額として償却計算を行います。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費 | xxx | 減価償却累計額 | xxx |
(取得原価-残価保証)÷リース期間=減価償却費
リース期間の終了時
リース物件の処分価額が残価保証額に満たない場合は、その不足額をリース資産売却損として計上します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却累計額 | xxx | リース資産 | xxx |
リース債務 | xxx | 未払金 | xxx |
リース資産売却損 | xxx |
具体例
当社は×1年4月1日(期首)に以下の条件で車両のリース契約(所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する)を締結した。
以下の時点における仕訳をそれぞれ示しなさい。なお、円未満の端数が生じた場合は四捨五入する。
(1) ×1年4月1日
(2) ×2年3月31日
(3) ×3年3月31日
- リース期間2年
- 借手の見積現金購入価額20,000円 (貸手の購入価額は不明)
- リース料:年額10,000円(毎年3月31日の後払い)
- リース物件の経済的耐用年数:3年
- 借手の追加借入利子率:年5%(貸手の計算利子率は不明)
- 借手の減価償却方法:定額法
- リース期間終了時に借手がリース物件の処分価額を500円まで保証する条項(残価保証)が付されている。
- 年5%で期間2年の現価係数は0.907、年金現価係数は1.859である。
(注) ×3年3月31日にリース物件を返却した。リース物件の処分価額が300円だったため、残価保証との差額200円を未払金に計上した。
【解答・解説】
(1) ×1年4月1日(リース取引の開始時)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
リース資産 | 19,044 | リース債務 | 19,044 |
- リース料総額の現在価値 10,000×1.859+500×0.907=19,044(四捨五入)
- 現在価値19,044<見積現金購入価額20,000 ∴19,044
リース料総額に残価保証額500円を含めて現在価値の算定を行うのがポイントです。
(2) ×2年3月31日
➀ リース料の支払い時
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
支払利息 | 952 ※1 | 当座 | 10,000 |
リース債務 | 9,048 ※2 |
※1 19,044×5%=952(四捨五入)
※2 10,000-952=9,048
➁ 決算時(決算整理仕訳)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費 | 9,272 | 減価償却累計額 | 9,272 |
(19,044-残価保証500)÷2年=9,272
残価保証額を残存価額として償却計算を行います。
(3) ×3年3月31日
➀ リース料の支払い時
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
支払利息 | 504 | 当座 | 10,000 |
リース債務 | 9,496 |
リース料10,000-(19,044- 9,048-残価保証500)=504
最後のリース料の支払いのときに、リース債務の残高が残価保証と同額になるように調整します。リース債務の残高500円=残価保証500円
➁ 決算時(決算整理仕訳)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費 | 9,272 | 減価償却累計額 | 9,272 |
(19,044-残価保証500)÷2年=9,272
③ リース期間の終了時
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却累計額 | 18,544 ※1 | リース資産 | 19,044 |
リース債務 | 500 ※2 | 未払金 | 200 ※3 |
リース資産売却損 | 200 ※3 |
※1 9,272×2年=18,544
※2 19,044-9,048-9,496=500(残価保証額)
※3 残価保証500-処分価額300=200
まとめ
- リース資産の価額は、リース料総額に残価保証額を含めて、現在価値の算定を行う。
- 残価保証額を残存価額として償却計算を行う。
- リース物件の処分価額が残価保証額に満たない場合は、その不足額をリース資産売却損として計上する。