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【収益認識基準】完全に履行義務を充足した時点で収益を認識する方法による仕訳、会計処理について解説

2021年5月20日

収益認識基準における工事契約の会計処理は、工事契約が一定の期間にわたり充足される履行義務に該当する場合、次の3つに分類できます。

1.進捗度にもとづき収益を認識
2.完全に履行義務を充足した時点で収益を認識
3.原価回収基準

この記事では、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識する方法による会計処理について解説します。



工事契約基準と収益認識基準との違い

工事契約基準と収益認識基準との違いは、簡単に説明すると「表現が変わったこと」「原価回収基準が追加されたこと」です。

  • 工事契約基準にあった工事進行基準のことを、収益認識基準では「進捗度にもとづき収益を認識する方法(一定期間で充足するもの)」といいます。
  • 工事契約基準にあった工事完成基準のことを、収益認識基準では「完全に履行義務を充足した時点で収益を認識する方法(一定時点で充足するもの)」といいます。
  • 工事進捗度の確実性が認められない場合で工事完成基準を適用していたケースは、「原価回収基準」で算定します。

収益認識基準では、契約に含まれる履行義務を「一定期間で充足するもの」と「一定時点で充足するもの」に識別します。

 

工事契約基準と収益認識基準の対応関係

工事契約基準 収益認識基準
工事進行基準 進捗度にもとづき収益を認識する方法(一定期間で充足するもの)
工事完成基準 完全に履行義務を充足した時点で収益を認識する方法(一定時点で充足するもの)
工事進捗度の確実性が認められない場合で工事完成基準を適用していたケース 原価回収基準

工事契約基準には、工事進行基準と工事完成基準がありました。 従来の工事契約基準では、工事の進捗部分についての成果の確実性が認められるには工事進行基準を適用し、認められない場合は工事完成基準を適用しました。 成果の確実性が認められる場合とは、「工事収益総額、工事原価総額、決算日における工事進捗度を合理的に見積もれる場合」です。

 

完全に履行義務を充足した時点で収益を認識する方法

完全に履行義務を充足した時点で収益を認識する方法とは、工事契約に関して、取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合は、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識する方法です。

工事完成基準の「工事契約に関して、工事が完成し、目的物の引渡しを行った時点で、工事収益及び工事原価を認識する方法」と同じイメージです。

 

工事代金の前受時

工事代金を前受けした場合、未成工事受入金勘定で処理します。

借方 金額 貸方 金額
現金 xxx 未成工事受入金 xxx

「未成工事受入金」勘定は一般商品売買における「前受金」勘定に該当します。

 

決算日の処理

完全に履行義務を充足した時点で収益を認識する方法では、工事収益及び工事原価の計上は工事が完成し、顧客に目的物を引き渡した時点で計上します。
したがって、決算時に未完成の工事について発生した原価は、貸借対照表上において「未成工事支出金」に計上され、資産として翌期に繰り越されます。

未成工事支出金の集計

決算日に、発生した原価(材料費・労務費・経費など)を、未成工事支出金勘定に振り替えます。

借方 金額 貸方 金額
未成工事支出金 xxx 材料費 xxx
労務費 xxx
経費 xxx

 

完成・引渡年度

未成工事支出金の集計

当期から完成時までに発生した原価を未成工事支出金に振り替えます。

借方 金額 貸方 金額
未成工事支出金 xxx 材料費 xxx
労務費 xxx
経費 xxx

 

完成工事高

工事が完成し、顧客に目的物を引き渡した時点で完成工事高を損益計算書に計上します。代金の受け取りが引き渡し後の場合には、完成工事未収入金勘定で処理します。

1.未成工事受入金がある場合

借方 金額 貸方 金額
未成工事受入金 xxx 完成工事高 xxx
完成工事未収入金 xxx

 

2.未成工事受入金がない場合

借方 金額 貸方 金額
完成工事未収入金 xxx 完成工事高 xxx

 

完成工事原価

取引開始日から完成時までにかかった原価の総額を未成工事支出勘定から完成工事原価勘定に振り替えます。

借方 金額 貸方 金額
完成工事原価 xxx 完成工事高 xxx

 

具体例

次の資料に基づいて、問1から問3の仕訳を示しなさい。

<資料>

(1)x1年度

① x1年6月5日、当社は建物の建設工事に係る契約を締結した。この工事契約は、取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合に該当する。

② 当社の契約時における工事収益総額は80,000千円であり、工事原価総額の見積額は60,000円千円である。

③ x1年6月7日、工事代金の一部として12,500千円が当座預金に振り込まれた。

④ x1年度の発生原価は、材料費5,000千円、労務費7,000千円、経費3,000千円であった。

(2)x2年度

x2年度の発生原価は、材料費10,000千円、労務費12,000千円、経費8,000千円であった。

(3)x3年度

建物が完成し、引渡した。x3年度の発生原価は、材料費4,500千円、労務費7,000千円、経費4,000千円であった。

 

問1

①契約締結時(x1年6月5日)、②工事代金の一部受取り時(x1年6月7日)、③決算日(x2年3月31日)の仕訳を示しなさい。

 

【解答・解説】

① 契約締結時(x1年6月5日)

仕訳不要

 

② 工事代金の一部受取り時(x1年6月7日)

借方 金額 貸方 金額
当座預金 12,500 完成工事未収入金 12,500

 

③ 決算日(x2年3月31日)

(イ)未成工事支出金の集計

借方 金額 貸方 金額
未成工事支出金 15,000 材料費 5,000
労務費 7,000
経費 3,000

 

問2

決算日(x3年3月31日)の仕訳を示しなさい。

 

【解答・解説】

(イ)未成工事支出金の集計

借方 金額 貸方 金額
未成工事支出金 30,000 材料費 10,000
労務費 12,000
経費 8,000

 

問3

決算日(x4年3月31日)の仕訳を示しなさい。

 

【解答・解説】

(イ)未成工事支出金の集計

借方 金額 貸方 金額
未成工事支出金 15,500 材料費 4,500
労務費 7,000
経費 4,000

 

(ロ)工事収益の計上

借方 金額 貸方 金額
未成工事受入金 20,000 完成工事高 80,000
完成工事未収入金 60,000 ※1

※1 完成工事未収入金:工事収益総額80,000千円-未成工事受入金20,000千円=20,000千円

 

(ハ)工事原価の振替

借方 金額 貸方 金額
完成工事原価 60,500 未成工事支出金 60,500 ※1

※1 15,000千円+30,000千円+15,500千円=60,500千円

 

まとめ

  • 収益認識基準の「完全に履行義務を充足した時点で収益を認識する方法」は、廃止された工事契約基準の「工事完成基準」に代わるもので、計算方法や仕訳は同じ。
  • 工事収益及び工事原価の計上は工事が完成し、顧客に目的物を引き渡した時点で計上する。
  • 決算時に未完成の工事について発生した原価は、「未成工事支出金」に計上し、翌期に繰り越される。

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