商品売買の記帳方法は三分法以外にも分記法、総記法、売上原価対立法、七分法などの方法があります。
この記事では「七分法」と「三分法」の違いと仕訳の方法について説明します。
目次
七分法
七分法(七分割法)とは、商品の売買取引について「仕入」「売上」「繰越商品」「仕入値引割戻」「仕入戻し」「売上値引割戻」「売上値戻り」の7つの勘定科目を用いて処理する方法です。
ココがポイント
- 商品を仕入れたときに原価で「仕入」勘定の借方に記入する。
- 仕入値引や仕入返品などの仕入控除取引は「仕入値引割戻」「仕入戻し」勘定を使って記入する。
- 販売したときに売価で「売上」勘定の貸方に記入する。
- 売上値引や売上返品などの売上控除取引は「売上値引割戻」「売上戻り」勘定を使って記入する。
- 決算整理で「仕入値引割戻」「仕入戻し」勘定の貸方残高を「仕入」勘定に振り替えて純仕入高を算定し、「売上値引割戻」「売上戻り」勘定の借方残高を「売上」勘定に振り替えて純売上高を算定する。
- 決算整理で売れ残り商品の原価を「繰越商品」勘定へ振り替える。
仕訳パターン
・仕入時
商品2,000円を掛で仕入れた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
仕入 | 2,000 | 買掛金 | 2,000 |
・売上時
商品2,100円(原価1,400)を掛で販売した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売掛金 | 2,100 | 売上 | 2,100 |
・仕入値引
掛で仕入れた商品のうち300円の値引きを受けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 300 | 仕入値引割戻 | 300 |
・仕入返品
掛で仕入れた商品のうち200円を返品した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 200 | 仕入戻し | 200 |
・売上値引
掛で売り上げ商品のうち120円の値引きをした。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売上値引割戻 | 120 | 売掛金 | 120 |
・売上返品
掛で売り上げ商品のうち450円(原価300円)の返品を受けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売上戻り | 450 | 売掛金 | 450 |
・決算整理
期首商品棚卸高600円、期末商品棚卸高1,000円である。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
仕入値引割戻 | 300 ※1 | 仕入 | 300 |
仕入戻し | 200 ※2 | 仕入 | 200 |
売上 | 120 | 売上値引割戻 | 120 ※3 |
売上 | 450 | 売上戻り | 450 ※4 |
仕入 | 600 | 繰越商品 | 600 |
繰越商品 | 1,000 | 仕入 | 1,000 |
※1 仕入値引300円
※2 仕入返品200円
※3 売上値引120円
※4 売上返品450円
三分法
三分法とは、商品の売買取引について「仕入」「売上」「繰越商品」の3つの勘定科目を用いて処理する方法です。
三分法は「三分割法」と呼ばれることもあります。
ココがポイント
- 商品を仕入れたときに原価で仕入勘定の借方に記入する。
- 販売したときに売価で売上勘定の貸方に記入する。
- 決算整理で売れ残り商品の原価を繰越商品勘定へ振り替える。
仕訳パターン
・仕入時
商品2,000円を掛で仕入れた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
仕入 | 2,000 | 買掛金 | 2,000 |
・売上時
商品2,100円(原価1,400)を掛で販売した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売掛金 | 2,100 | 売上 | 2,100 |
・仕入値引
掛で仕入れた商品のうち300円の値引きを受けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 300 | 仕入 | 300 |
・仕入返品
掛で仕入れた商品のうち200円を返品した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 200 | 仕入 | 200 |
・売上値引
掛で売り上げ商品のうち120円の値引きをした。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売上 | 120 | 売掛金 | 120 |
・売上返品
掛で売り上げ商品のうち450円(原価300円)の返品を受けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売上 | 450 | 売掛金 | 450 |
・決算整理
期首商品棚卸高600円、期末商品棚卸高1,000円である。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
仕入 | 600 | 繰越商品 | 600 |
繰越商品 | 1,000 | 仕入 | 1,000 |
七分法と三分法の違い
七分法 | 三分法 | |
使用する勘定科目 | ・仕入(費用) ・仕入値引割戻(費用) ・仕入戻し(費用) ・売上(収益) ・売上値引割戻(収益) ・売上戻り(収益) ・繰越商品(資産) |
・仕入(費用) ・売上(収益) ・繰越商品(資産) |
決算整理仕訳 | 必要 | 必要 |
例題:七分法と三分法の比較
①仕入時
商品2,000円を掛で仕入れた。
七分法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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②売上時
商品2,100円(原価1,400)を掛で販売した。
七分法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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③仕入値引
掛で仕入れた商品のうち300円の値引きを受けた。
七分法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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④仕入返品
掛で仕入れた商品のうち200円を返品した。
七分法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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⑤売上値引
掛で売り上げ商品のうち120円の値引きをした。
七分法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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⑥売上返品
掛で売り上げ商品のうち450円(原価300円)の返品を受けた。
七分法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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⑦決算整理前残高試算表(前T/B)
期首商品棚卸高600円、期末商品棚卸高1,000円である。
七分法 | 三分法 |
借方:繰越商品600円、仕入2,000円、売上値引割戻120円、売上戻り450円
貸方:売上2,100円、仕入値引割戻300円、仕入戻し200円 |
借方:繰越商品600円、仕入1,500円
貸方:売上1,530円 |
(注)売掛金、買掛金は省略。
七分法の場合、決算整理前の仕入勘定の金額は総仕入高を示し、売上勘定の金額は総売上高を示します。
⑧決算整理
期首商品棚卸高600円、期末商品棚卸高1,000円である。
七分法 | 三分法 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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⑨決算整理後残高試算(後T/B)
七分法 | 三分法 |
借方:繰越商品1,000円、仕入1,100円
貸方:売上1,530円 |
借方:繰越商品1,000円、仕入1,100円
貸方:売上1,530円 |
(注)売掛金、買掛金は省略。
七分法、三分法のどちらで計算しても利益は同じとなります。
七分法:売上1,530円-仕入1,100円=430円(利益)
三分法:売上1,530円-仕入1,100円=430円(利益)
まとめ
- 七分法は「仕入」「売上」「繰越商品」「仕入値引割戻」「仕入戻し」「売上値引割戻」「売上値戻り」の7つの勘定を使用し、決算整理仕訳が必要。
- 三分法は「仕入」「売上」「繰越商品」の3つの勘定を使用し、決算整理仕訳が必要。
- 七分法、三分法のどちらで計算しても利益は同額となる。