商品売買の記帳方法は三分法以外にも分記法、総記法、売上原価対立法、五分法などの方法があります。
この記事では「五分法」と「三分法」の違いと仕訳の方法について説明します。
目次
五分法
五分法（五分割法）とは、商品の売買取引について「仕入」「売上」「繰越商品」「仕入値引・戻し」「売上値引・戻り」の5つの勘定科目を用いて処理する方法です。
ココがポイント
- 商品を仕入れたときに原価で「仕入」勘定の借方に記入する。
- 仕入値引や仕入返品などの仕入控除取引は「仕入値引・戻し」勘定を使って記入する。
- 販売したときに売価で「売上」勘定の貸方に記入する。
- 売上値引や売上返品などの売上控除取引は「売上値引・戻り」勘定を使って記入する。
- 決算整理で「仕入値引・戻し」勘定の貸方残高を「仕入」勘定に振り替えて純仕入高を算定し、「売上値引・戻り」勘定の借方残高を「売上」勘定に振り替えて純売上高を算定する。
- 決算整理で売れ残り商品の原価を「繰越商品」勘定へ振り替える。
仕訳パターン
・仕入時
商品2,000円を掛で仕入れた。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 仕入 | 2,000 | 買掛金 | 2,000 |
・売上時
商品2,100円（原価1,400）を掛で販売した。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 売掛金 | 2,100 | 売上 | 2,100 |
・仕入値引
掛で仕入れた商品のうち300円の値引きを受けた。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 買掛金 | 300 | 仕入値引・戻し | 300 |
・仕入返品
掛で仕入れた商品のうち200円を返品した。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 買掛金 | 200 | 仕入値引・戻し | 200 |
・売上値引
掛で売り上げ商品のうち120円の値引きをした。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 売上値引・戻り | 120 | 売掛金 | 120 |
・売上返品
掛で売り上げ商品のうち450円（原価300円）の返品を受けた。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 売上値引・戻り | 450 | 売掛金 | 450 |
・決算整理
期首商品棚卸高600円、期末商品棚卸高1,000円である。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 仕入値引・戻し | 500 ※１ | 仕入 | 500 |
| 売上 | 570 | 売上値引・戻り | 570 ※２ |
| 仕入 | 600 | 繰越商品 | 600 |
| 繰越商品 | 1,000 | 仕入 | 1,000 |
※１ 仕入値引300円＋仕入返品200円＝500円
※２ 売上値引120円＋売上返品450円＝570円
三分法
三分法とは、商品の売買取引について「仕入」「売上」「繰越商品」の３つの勘定科目を用いて処理する方法です。
三分法は「三分割法」と呼ばれることもあります。
ココがポイント
- 商品を仕入れたときに原価で仕入勘定の借方に記入する。
- 販売したときに売価で売上勘定の貸方に記入する。
- 決算整理で売れ残り商品の原価を繰越商品勘定へ振り替える。
仕訳パターン
・仕入時
商品2,000円を掛で仕入れた。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 仕入 | 2,000 | 買掛金 | 2,000 |
・売上時
商品2,100円（原価1,400）を掛で販売した。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 売掛金 | 2,100 | 売上 | 2,100 |
・仕入値引
掛で仕入れた商品のうち300円の値引きを受けた。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 買掛金 | 300 | 仕入 | 300 |
・仕入返品
掛で仕入れた商品のうち200円を返品した。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 買掛金 | 200 | 仕入 | 200 |
・売上値引
掛で売り上げ商品のうち120円の値引きをした。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 売上 | 120 | 売掛金 | 120 |
・売上返品
掛で売り上げ商品のうち450円（原価300円）の返品を受けた。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 売上 | 450 | 売掛金 | 450 |
・決算整理
期首商品棚卸高600円、期末商品棚卸高1,000円である。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 仕入 | 600 | 繰越商品 | 600 |
| 繰越商品 | 1,000 | 仕入 | 1,000 |
五分法と三分法の違い
| 五分法 | 三分法 | |
| 使用する勘定科目 | ・仕入（費用） ・仕入値引・戻し（費用） ・売上（収益） ・売上値引・戻り（収益） ・繰越商品（資産） |
・仕入（費用） ・売上（収益） ・繰越商品（資産） |
| 決算整理仕訳 | 必要 | 必要 |
例題：五分法と三分法の比較
①仕入時
商品2,000円を掛で仕入れた。
| 五分法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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②売上時
商品2,100円（原価1,400）を掛で販売した。
| 五分法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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③仕入値引
掛で仕入れた商品のうち300円の値引きを受けた。
| 五分法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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④仕入返品
掛で仕入れた商品のうち200円を返品した。
| 五分法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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⑤売上値引
掛で売り上げ商品のうち120円の値引きをした。
| 五分法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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⑥売上返品
掛で売り上げ商品のうち450円（原価300円）の返品を受けた。
| 五分法 | 三分法 | ||||||||||||||||
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⑦決算整理前残高試算表（前T/B）
期首商品棚卸高600円、期末商品棚卸高1,000円である。
| 五分法 | 三分法 |
| 借方：繰越商品600円、仕入2,000円、売上値引・戻り570円
貸方：売上2,100円、仕入値引・戻し500円 |
借方：繰越商品600円、仕入1,500円
貸方：売上1,530円 |
（注）売掛金、買掛金は省略。
ココがポイント
五分法の場合、決算整理前の仕入勘定の金額は総仕入高を示し、売上勘定の金額は総売上高を示します。
⑧決算整理
期首商品棚卸高600円、期末商品棚卸高1,000円である。
| 五分法 | 三分法 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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⑨決算整理後残高試算（後T/B）
| 五分法 | 三分法 |
| 借方：繰越商品1,000円、仕入1,100円
貸方：売上1,530円 |
借方：繰越商品1,000円、仕入1,100円
貸方：売上1,530円 |
（注）売掛金、買掛金は省略。
五分法、三分法のどちらで計算しても利益は同じとなります。
五分法：売上1,530円－仕入1,100円＝430円（利益）
三分法：売上1,530円－仕入1,100円＝430円（利益）
まとめ
- 五分法は「仕入」「仕入値引・戻し」「売上」「売上値引・戻り」「繰越商品」の５つの勘定を使用し、決算整理仕訳が必要。
- 三分法は「仕入」「売上」「繰越商品」の３つの勘定を使用し、決算整理仕訳が必要。
- 五分法、三分法のどちらで計算しても利益は同額となる。