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【契約負債】複数の履行義務の充足に関する仕訳、会計処理について解説【契約資産】

2021年10月8日

複数の履行義務の充足とは、1つの取引の中に異なる履行義務が含まれている場合で、その履行義務が果たすことをいいます。
具体的には、「製品の販売とそれに伴う保守サービスを提供するという契約」や「商品Aと商品Bの引き渡しといった複数の履行義務が含まれた契約」が該当します。

この記事では、複数の履行義務の充足に関する仕訳、会計処理について解説します。



一時点で充足される履行義務と一定期間にわたって充足される履行義務が含まれる取引

「製品の販売とそれに伴う保守サービスを提供するという契約」は、一時点で充足される履行義務(製品の販売)と一定期間にわたって充足される履行義務(保守サービス)が1つとなった取引です。

1つの取引の中に異なる履行義務が含まれている場合には、収益の計上のタイミングが異なります。

例題1
x1年4月1日、当社はA社に対して製品の販売と2年間の製品に係る保守サービスを提供する契約を締結し、160,000円を現金で受け取った。製品は同日中に引き渡した。なお、製品の独立販売価格は100,000円で、2年間の製品に係る保守サービスの独立販売価格は60,000円である。

借方 金額 貸方 金額
現金 160,000 売上 100,000
契約負債 60,000

保守サービスについては、履行義務を充足していないため、契約負債に計上します。

 

例題2
x2年3月31日(決算日)、当期分の保守サービスの収益計上を行った。

借方 金額 貸方 金額
契約負債 30,000 ※1 役務収益 ※2 30,000

※1 60,000円÷2年=30,000円
※2 売上勘定で処理することもあります。
履行義務を充足した保守サービスに対応する分を収益に計上します。

 

例題3
x3年3月31日(決算日)、当期分の保守サービスの収益計上を行った。

借方 金額 貸方 金額
契約負債 30,000 ※1 役務収益 ※2 30,000

※1 60,000円÷2年=30,000円
※2 売上勘定で処理することもあります。
履行義務を充足した保守サービスに対応する分を収益に計上します。

 

すべての履行義務を充足した後にのみ、代金の請求ができる取引

「商品Aと商品Bの引き渡しという複数の履行義務が含まれた契約」は、すべての履行義務を充足した後にのみ、代金の請求ができる取引です。

商品Aを引き渡した時点では代金の請求をすることはできず、商品Bの引き渡しが完了し、すべての履行義務を充足した時点で、はじめて代金の請求をすることができます。

販売する商品の一部分のみを引き渡し、部分的に履行義務を充足した場合は、収益を「売上」に計上するとともに、相手勘定を「契約資産」で処理します。
すべての履行義務を充足した時点で、「売掛金」に計上します。

 

例題1
x5年4月1日、当社はA社に対して、20,000円のテーブルと10,000円の椅子を販売する契約を締結した。
先行してテーブルをA社へ引き渡したが、代金は椅子を含むすべての商品を引き渡した後に請求することとなっているため、テーブルの代金はまだ顧客に対する債権にはなっていない。
ただし、テーブルの引き渡しと、椅子の引き渡しは、それぞれ独立した履行義務として識別する。

借方 金額 貸方 金額
契約資産 20,000 売上 20,000

テーブルの引き渡しと椅子の引き渡しという、複数の履行義務を含む販売契約を締結した場合、収益の計上は履行義務ごとに処理しますが、すべての履行義務を充足していないため、「売上」の相手勘定は売掛金ではなく「契約資産」で処理します。

 

例題2
x5年4月5日、例題1の販売契約で締結した椅子10,000円をA社に引き渡した。なお、当該契約の代金は、今月末に一括してA社に請求する。

借方 金額 貸方 金額
売掛金 30,000  ※1 売上 10,000
契約資産 20,000

※1 10,000円+20,000円=30,000円

すべての履行義務を充足した時点で、売掛金を計上します。先行して引き渡していたテーブルの代金については、契約資産勘定の減少として処理します。

 

具体例

問1
次の一連の取引につき、当社の各時点の仕訳を示しなさい。

(1) x7年4月1日、当社はA社に対して製品の販売と5年間の製品に係る保守サービスを提供する契約を締結し、500,000円を現金で受け取った。製品は同日中に引き渡した。なお、製品の独立販売価格は400,000円で、5年間の製品に係る保守サービスの独立販売価格は100,000円である。

(2) x8年3月31日(決算日)、当期分の保守サービスの収益計上を行った。

 

【解答・解説】

(1)

借方 金額 貸方 金額
現金 500,000 売上 400,000
契約負債 100,000

 

(2)

借方 金額 貸方 金額
契約負債 20,000 ※1 役務収益 ※2 20,000

※1 100,000円÷5年=20,000円
※2 売上勘定で処理することもあります。
履行義務を充足した保守サービスに対応する分を収益に計上します。

 

問2
次の一連の取引につき、当社の各時点の仕訳を示しなさい。

(1) x8年5月1日、当社はB社に対して、冷蔵庫5台(@100,000円)と電子レンジ10台(20,000円)を販売する契約を締結した。
先行して冷蔵庫1台をB社へ引き渡したが、代金は冷蔵庫と電子レンジのすべての商品を引き渡した後に請求することとなっているため、冷蔵庫1台の代金はまだ顧客に対する債権にはなっていない。
ただし、冷蔵庫の引き渡しと電子レンジの引き渡しは、それぞれ独立した履行義務として識別する。

 

(2) x8年5月7日、(1)の販売契約で締結した冷蔵庫4台(@100,000円)と電子レンジ10台(20,000円)をB社に引き渡した。なお、当該契約の代金は、今月末に一括してB社に請求する。

 

【解答・解説】

(1)

借方 金額 貸方 金額
契約資産 100,000 売上 100,000

 

(2)

借方 金額 貸方 金額
売掛金 700,000  ※1 売上 600,000
契約資産 100,000

※1 10,000円+20,000円=30,000円

 

 

まとめ

  • 履行義務を充足していない保守サービスは「契約負債」に計上する。
  • 販売する商品の一部分のみを引き渡し、部分的に履行義務を充足した場合は、収益を「売上」に計上するとともに、相手勘定を「契約資産」で処理する。

なお、複数の履行義務の充足に関する会計処理は日商簿記2級の試験範囲です。

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