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【変動対価】返金負債が生じる売上割戻(リベート)の仕訳、会計処理について解説

2022年3月7日

収益認識基準の適用により、売上割戻(リベート)の処理方法が変わりました。

この記事では、返金負債が生じる売上割戻の会計処理について解説します。



変動対価と売上割戻(リベート)

変動対価とは、顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分のことをいいます。

変動対価が含まれる取引

値引き、リベート、返金、インセンティブ、業績に基づく割増金、ペナルティー等の形態により対価の額が変動する場合や、返品権付きの販売など(適用指針第23項)。

売上割戻とは、一定期間に多額または多量の取引をした得意先に対して、売上代金の一部を減額することをいいます。商品をたくさん購入してくれたお礼に安くしてあげるイメージです。売上割戻はリベートと呼ばれることもあります。

 

返金負債

返金負債とは、顧客から受け取った対価のうち返金が見込まれる部分です。
割戻しや返品される可能性が高い部分は収益を認識せず、返金負債を計上します。

返金負債は、顧客から受け取った対価のうち、返金が見込まれる部分なので、未払金に近いイメージです。

勘定科目と貸借対照表の表示区分

勘定科目 貸借対照表の表示区分
返金負債 流動負債

 

商品販売時(割戻の条件付き)の仕訳

例題1

4月1日、当社は甲社に対してA商品200個を下記の条件で販売し、代金は現金で受け取った。なお、この条件は達成される可能性が高いと見込まれる。

<条件>
① A商品の販売単価は1個当たり1,000円である。
② 甲社に対する月間の販売数量が合計500個以上購入した場合、商品1個あたりにつき50円のリベートを支払う。

借方 金額 貸方 金額
現金 200,000 ※1 売上 190,000 ※2
返金負債 10,000 ※3

※1 @1,000円×200個=200,000円
※2 (@1,000円-@50円)×200個=190,000円
将来リベートを支払う可能性が高い部分(返金負債)を差し引いて、売上に計上します。

※3 @50円×200個=10,000円
リベートの見積額10,000円は変動対価に該当し、返金する可能性が高いため、取引価格(売上)に含めずに返金負債として処理します。

 

条件達成時の仕訳

例題2

4月30日、当社は甲社に対してA商品300個を1個当たり1,000円で販売し、代金は現金で受け取った。これにより例題1のリベート条件が達成された。

借方 金額 貸方 金額
現金 300,000 ※1 売上 285,000 ※2
返金負債 15,000 ※3

※1 @1,000円×300個=300,000円
※2 (@1,000円-@50円)×300個=285,000円
※3 @50円×300個=15,000円

 

リベート支払い時の仕訳

例題3

4月30日に例題1のリベート条件が達成されたので、5月7日に当社は甲社に対してリベートを現金で支払った。

借方 金額 貸方 金額
返金負債 25,000 ※1 現金 25,000

※1 10,000円(例題1)+15,000円(例題2)=25,000円
リベートを支払ったときに返金負債(例題1と例題2を合わせた金額)を取り崩します。

 

リベートの条件が達成しなかったときの仕訳

例題4

4月30日、例題1のリベート条件が達成しなかったので、計上していた返金負債を取り崩した。

借方 金額 貸方 金額
返金負債 10,000 ※1 売上 10,000

※1 例題1で計上した返金負債

 

具体例

下記の資料に基づいて、問1~問4の仕訳を示しなさい。

<資料>
当社はA社と次の条件で商品の販売契約を締結している。
① 商品の販売単価は1個当たり3,000円とする。
② 月間の販売数量が500個以上となった場合には、販売単価を遡及的に1個当たり2,900円とする。

問1
6月2日、当社はA社に対して商品50個を掛で販売した。これにより当月の販売数量が500個以上になる可能性は低いと考えられる。

 

【解答・解説】

借方 金額 貸方 金額
売掛金 100,000 売上 100,000 ※1

※1 @2,000円×50個=100,000円

 

問2
6月10日、当社はA社に対して商品300個を掛で販売した。これにより当月の販売数量が500個以上になる可能性が高くなったと考えられる。

 

【解答・解説】

借方 金額 貸方 金額
売掛金 600,000 ※1 売上 565,000 ※2
返金負債 35,000 ※3

※1 @2,000円×300個=600,000円
※2 @1,900円×300個-(@2,000円-@1,900円)×50個=565,000円
※3 差額または(@2,000円-@1,900円)×(50個+300個)=35,000円

リベートの可能性が高くなった時に、リベートの可能性が低いと考えていた分(問1の50個)も含めて返金負債に計上し、売上から控除します。

 

問3
6月25日、当社はA社に対して商品300個を掛で販売した。これにより当月の販売数量が500個以上となった。

 

【解答・解説】

借方 金額 貸方 金額
売掛金 600,000 ※1 売上 570,000 ※2
返金負債 30,000 ※3

※1 @2,000円×300個=600,000円
※2 @1,900円×300個=570,000円
※3 差額または(@2,000円-@1,900円)×300個=30,000円

 

問4
6月30日、A社に対して65,000円のリベート(売上割戻)を実施する要件を満たしていることが判明した。

 

【解答・解説】

借方 金額 貸方 金額
返金負債 65,000 売掛金 65,000

返金負債は、リベートの支払い時や売掛金と相殺した時などに減少させます。

 

まとめ

  • 返金負債とは、顧客から受け取った対価のうち返金が見込まれる部分で流動負債に計上する。
  • 割戻しや返品される可能性が高い部分は収益を認識せず、返金負債を計上する。
  • 返金負債は、リベートの支払い時や売掛金と相殺した時などに減少させる。

なお、返金負債が生じる売上割戻の会計処理は日商簿記2級の試験範囲です。

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