所得税の課税方法は「総合課税」と「分離課税」に分けられます。
所得税は、各種の所得金額を合計してから課税をする「総合課税」が原則ですが、土地や建物の譲渡、退職金などは他の所得と区別して課税する「分離課税」が適用されます。
この記事では、総合課税と分離課税について解説します。
目次
総合課税
総合課税とは、各種の所得金額を合計してから課税する方法のことをいいます。
総合課税の対象となる所得は下記のとおりです。
- 利子所得(源泉分離課税とされるもの、申告分離課税とされるものを除く。)
- 配当所得(源泉分離課税とされるもの、申告不要を選択したもの、上場株式等の配当について申告分離課税を選択したものを除く。)
- 不動産所得
- 事業所得(株式等の譲渡による事業所得を除く。)
- 給与所得
- 譲渡所得(土地・建物等及び株式等の譲渡による譲渡所得を除く。)
- 一時所得(源泉分離課税とされるものを除く。)
- 雑所得(株式等の譲渡による雑所得、源泉分離課税とされるものを除く。)
分離課税
分離課税とは、他の所得金額と合計せずに課税する方法のことをいいます。
分離課税の対象となる所得は下記のとおりです。
- 利子所得(源泉分離課税とされるもの、申告分離課税とされるもの)
- 配当所得(源泉分離課税とされるもの、申告不要を選択したもの(確定申告不要制度)、上場株式等の配当について申告分離課税を選択したもの)
- 退職所得
- 山林所得
- 土地・建物等の譲渡による譲渡所得
- 株式等の譲渡所得
- 先物取引による雑所得等
源泉分離課税と申告分離課税
- 源泉分離課税とは、他の所得と分離して、所得を支払う人が源泉徴収することで所得税の納税が完了する制度のことをいいます。源泉分離課税に該当する所得は、確定申告の対象となる所得から除外されます。
- 申告分離課税とは、他の所得と合算せず、分離して税額を計算し、確定申告で納税する制度のことをいいます。
総合課税と分離課税の比較表
総合課税 | 分離課税 |
利子所得(源泉分離課税、申告分離課税とされるものを除く。) | 利子所得(源泉分離課税、申告分離課税) |
配当所得(源泉分離課税とされるもの、申告不要を選択したもの、上場株式等の配当について申告分離課税を選択したものを除く。) | 配当所得(源泉分離課税とされるもの、申告不要を選択したもの、上場株式等の配当について申告分離課税を選択したもの) |
不動産所得 | 土地・建物等の譲渡による譲渡所得 |
事業所得(株式等の譲渡による事業所得を除く。) | 株式等の譲渡による譲渡所得 |
給与所得 | 退職所得 |
譲渡所得(土地・建物等及び株式等の譲渡による譲渡所得を除く。) | 山林所得 |
一時所得(源泉分離課税とされるものを除く。) | 先物取引による雑所得等 |
雑所得(株式等の譲渡による雑所得、源泉分離課税とされるものを除く。) |
利子所得は、原則として分離課税です。
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総合課税と分離課税の覚え方
所得税は総合課税が原則です。
総合課税に該当するものは、給与所得など日常的に発生する所得です。
分離課税に該当するものは、「建物の譲渡や退職金など、金額が大きくて滅多に発生しないもの」や「利子や配当などで手続きが煩雑なもの」です。
覚え方
金額が大きくて滅多に発生しないもの、手続きが煩雑なものは分離課税。それ以外は総合課税。
語呂合わせで覚える方法
分離課税の語呂合わせは下記のとおりです。
利子配当は複雑だから土地・建物、株式を譲渡して退散。その先は分離。
- 利子→利子所得
- 配当→配当所得
- 複雑→利子所得、配当所得は総合課税に該当するものと分離課税に該当するものがあって複雑
- 土地・建物、株式を譲渡→土地・建物等の譲渡による譲渡所得、株式等の譲渡による譲渡所得
- 退→退職所得
- 散→山林所得
- その先→先物取引による雑所得等
- 分離→分離課税
分離課税に該当しない所得は総合課税です。上記の「総合課税と分離課税の比較表」で確認してください。
FP試験は覚えることがたくさんあるので、細かいところまで覚えようとするのは得策ではありません。総合課税と分離課税の区分を完璧に覚えるよりも「PER、PBR、ROE」などの頻出論点を得点源にしてください。
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例題
次の所得のうち、分離課税に該当するものを選びなさい。
1.給与所得
2.事業所得
3.退職所得
4.不動産所得
【解答・解説】
3
給与所得、事業所得、不動産所得は総合課税に該当します。