簿記

【変動対価】返品権付きの販売の仕訳、会計処理について解説【収益認識基準】

2021年8月5日

返品権付きの販売とは、顧客との契約において、商品又は製品の支配を顧客に移転するとともに、当該商品又は製品を返品して、次の(1)から(3)を受ける権利を顧客に付与する販売方式のことをいいます。

(1) 顧客が支払った対価の全額又は一部の返金
(2) 顧客が企業に対して負う又は負う予定の金額に適用できる値引き
(3) 別の商品又は製品への交換

なお、従来の返品調整引当金による会計処理は廃止されました。

この記事では、返品権付きの販売の仕訳、会計処理について解説します。

勘定科目と貸借対照表の表示区分

勘定科目 貸借対照表の表示区分
返金負債 流動負債
返品資産 流動資産

 

返金負債

返金負債とは、顧客から受け取った対価のうち返金が見込まれる部分です。
割戻しや返品される可能性が高い部分は収益を認識せず、返金負債を計上します。

 

返品資産

返品資産とは、顧客から商品を回収する権利のことをいいます。
返品資産は、返品されると見込まれる商品又は製品の帳簿価額から予測される回収コスト(商品又は製品の価値の潜在的な下落の見積額を含む。)を控除して測定します。

 

販売時

x1年8月1日、当社は、顧客へ商品100個(売価@200円、原価@150円)を販売し、代金は現金で受け取った。なお、未使用の商品を1カ月以内に返品した場合は全額の返金が行われる契約であり、返品予想は3個と見込んだ。当社は売上原価対立法を採用している。

借方 金額 貸方 金額
現金 20,000 ※1 売上 19,400 ※2
返金負債 600 ※3
売上原価 14,550 ※4 商品 15,000 ※5
返品資産 450 ※6

※1 売価@200円×100個=20,000円
※2 売価@200円×(100個-返品見込3個)=19,400円
※3 売価@200円×返品見込3個=600円 返品見込分については収益を認識せず、売価で返金負債に計上します。
※4 原価@150円×(100個-返品見込3個)=14,550円
※5 原価@150円×100個=15,000円
※6 原価@150円×返品見込3個=450円 返品見込分を原価で返品資産に計上します。

販売分から返品見込分を控除して「売上」と「売上原価」に計上します。

 

返品時

x1年8月30日、顧客より商品2個が返品されたので現金で返金した。

借方 金額 貸方 金額
返金負債 400 ※1 現金 400
商品 300 返品資産 300 ※2

※1 売価@200円×返品2個=400円
※2 原価@150円×返品2個=300円

 

返品されなかった見込分

x1年8月31日、返品見込3個のうち1個が返品されなかったので、計上していた返金負債、返品資産を取り崩した。

借方 金額 貸方 金額
返金負債 200 ※1 売上 200
売上原価 150 返品資産 150 ※2

※1 売価@200円×返品見込1個=200円
※2 原価@150円×返品見込1個=150円

返品されないことが確定した時に「売上」と「売上原価」に計上するとともに、対応する「返金負債」と「返品資産」を取り崩します。

 

消費税等を考慮する場合

販売時

x1年8月1日、当社は、顧客へ商品100個(売価@200円、原価@150円)を販売し、代金は現金で受け取った。なお、未使用の商品を30日以内に返品した場合は全額の返金が行われる契約であり、返品予想は3個と見込んだ。当社は売上原価対立法を採用しており、税抜方式(消費税率10%)で計算する。

借方 金額 貸方 金額
現金 22,000 ※1 売上 19,400 ※2
返金負債 600 ※3
仮受消費税等 2,000 ※4
売上原価 14,550 ※5 商品 15,000 ※6
返品資産 450 ※7

※1 売価@200円×100個×1.1=22,000円 消費税率が10%なので1.1を乗じて税込金額にします。
※2 売価@200円×(100個-返品見込3個)=19,400円
※3 売価@200円×返品見込3個=600円
※4 売価@200円×100個×消費税率10%=2,000
※5 原価@150円×(100個-返品見込3個)=14,550円
※6 原価@150円×100個=15,000円
※7 原価@150円×返品見込3個=450円

 

返品時

x1年8月30日、顧客より商品2個が返品されたので現金で返金した。

借方 金額 貸方 金額
返金負債 400 ※1 現金 440 ※2
仮受消費税等 40 ※3
商品 300 返品資産 300 ※4

※1 売価@200円×返品2個=400円
※2 売価@200円×返品2個×1.1=440円
※3 売価@200円×返品2個×消費税率10%=40円
※4 原価@150円×返品2個=300円

 

返品されなかった見込分

x1年8月31日、返品見込3個のうち1個が返品されなかったので、計上していた返金負債、返品資産を取り崩した。

借方 金額 貸方 金額
返金負債 200 ※1 売上 200
売上原価 150 返品資産 150 ※2

※1 売価@200円×返品見込1個=200円
※2 原価@150円×返品見込1個=150円

仮受消費税等は、販売時に返品見込分も含めて計上しているため、ここでの仕訳は不要です。

 

具体例

下記の資料に基づいて、問1~問3の仕訳を売上原価対立法で答えなさい。

<資料>
当社は次の条件で顧客と商品の販売契約を締結している。
① 商品の販売単価は1個当たり5,000円とする。
② 未使用の商品を30日以内に返品する場合、全額の返金に応じる。

 

問1
x2年7月1日、当社は、顧客へ商品200個(売価@5,000円、原価@4,000円)を販売し、代金は現金で受け取った。当該商品の返品見込は5個である。

 

【解答・解説】

借方 金額 貸方 金額
現金 1,000,000 ※1 売上 975,000 ※2
返金負債 25,000 ※3
売上原価 780,000 ※4 商品 800,000 ※5
返品資産 20,000 ※6

※1 売価@5,000円×200個=1,000,000円
※2 売価@5,000円×(200個-返品見込5個)=975,000円
※3 売価@5,000円×返品見込5個=25,000円
※4 原価@4,000円×(200個-返品見込5個)=780,000円
※5 原価@4,000円×200個=800,000円
※6 原価@4,000円×返品見込5個=20,000円

 

問2
x2年7月26日、顧客より商品4個が返品されたので現金で返金した。

 

【解答・解説】

借方 金額 貸方 金額
返金負債 600 ※1 現金 20,000
商品 16,000 返品資産 16,000 ※2

※1 売価@5,000円×返品4個=20,000円
※2 原価@4,000円×返品4個=16,000円

 

問3
x2年7月31日、問1で計上した返品見込5個のうち1個が返品されなかった。

 

【解答・解説】

借方 金額 貸方 金額
返金負債 5,000 ※1 現金 5,000
商品 4,000 返品資産 4,000 ※2

※1 売価@5,000円×返品1個=5,000円
※2 原価@4,000円×返品1個=4,000円

 

まとめ

  • 返金負債とは、顧客から受け取った対価のうち返金が見込まれる部分。割戻しや返品される可能性が高い部分は収益を認識せず、返金負債に計上する。
  • 返品資産とは、顧客から商品を回収する権利のこと。返品資産は、返品されると見込まれる商品又は製品の帳簿価額から予測される回収コストを控除して測定する。
  • 返品権付きの販売では、商品の販売時に返品見込分の収益は認識せず、売価で返金負債に計上し、返品見込分を原価で返品資産に計上する。

なお、返品権付きの販売の会計処理は日商簿記2級の試験範囲です。

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