商品評価損の仕訳には、洗替法と切放法の2通りの方法があります。
洗替法とは、当初の取得原価(簿価切下げ前の帳簿価額)を翌期の取得原価とし、翌期以降も当初の取得原価と正味売却価額とを比較する方法です。
切放法とは、簿価切下げ後の帳簿価額のまま据え置き、翌期以降は簿価切下げ後の帳簿価額と正味売却価額とを比較する方法です。
前期に計上した簿価切下げ額の戻入れについては、洗替法と切放法のいずれかの方法を棚卸資産の種類ごとに選択適用できます。
目次
商品評価損
商品評価損とは、取得原価と正味売却価額との差額のことをいいます。
商品評価損=取得原価-正味売却価額
正味売却価額=売価-(見積追加製造原価+見積販売直接経費)
棚卸資産会計基準第7項
洗替法の会計処理
洗替法の会計処理は、「繰越商品を減額する方法」と「商品低価評価勘定を用いる方法」があります。
どちらの方法を採用しても、貸借対照表の商品の金額は同じになります。
繰越商品を減額する方法
商品1,000円 正味売却価額950円
<当期末>
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品評価損 ※1 | 50 | 繰越商品 | 50 |
<翌期首>
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
繰越商品 | 50 | 商品評価損 ※1 | 50 |
当初の取得原価に戻すために洗い替え処理をします。
※1 「収益性低下評価損益」勘定などで処理することもあります。
商品低価評価勘定を用いる場合
商品1,000円 正味売却価額950円
<当期末>
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品評価損 | 50 | 商品低価評価勘定 | 50 |
<翌期首>
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品低価評価勘定 | 50 | 商品低価評価勘定戻入 | 50 |
切放法の会計処理
切放し法の会計処理は、繰越商品を減額する方法のみです。
仕訳例
商品1,000円 正味売却価額950円
<当期末>
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品評価損 | 50 | 繰越商品 | 50 |
<翌期首>
仕訳なし |
商品評価損を切り放すので戻入れ処理は行いません。
具体例
洗替法(繰越商品を減額する方法)
次の資料に基づき、決算整理及び翌期首の仕訳を示しなさい。
(資料)
期末商品棚卸高(棚卸減耗は生じていない。)
帳簿棚卸原価10,000円 売価11,000円 見積販売直接経費1,500円
なお、商品の評価については洗替法を採用している。また、前期末に商品の収益性低下の事実はなかった。
【解答・解説】
決算整理
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品評価損 | 500 | 繰越商品 | 500 ※1 |
※1 帳簿棚卸原価10,000円-(売価11,000円-見積販売直接経費1,500円)=500円
翌期首
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
繰越商品 | 500 | 商品評価損 | 500 |
洗替法(商品低価評価勘定を用いる場合)
次の資料に基づき、決算整理及び翌期首の仕訳を示しなさい。
(資料)
期末商品棚卸高(棚卸減耗は生じていない。)
帳簿棚卸原価10,000円 売価11,000円 見積販売直接経費1,500円
なお、商品の評価については洗替法(商品低価評価勘定)を採用している。また、前期末に商品の収益性低下の事実はなかった。
【解答・解説】
決算整理
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品評価損 | 500 | 商品低価評価勘定 | 500 ※1 |
※1 帳簿棚卸原価10,000円-(売価11,000円-見積販売直接経費1,500円)=500円
翌期首
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品低価評価勘定 | 500 | 商品低価評価勘定戻入 | 500 |
切放法
次の資料に基づき、決算整理及び翌期首の仕訳を示しなさい。
(資料)
期末商品棚卸高(棚卸減耗は生じていない。)
帳簿棚卸原価10,000円 売価11,000円 見積販売直接経費1,500円
なお、商品の評価については切放法を採用している。また、前期末に商品の収益性低下の事実はなかった。
【解答・解説】
決算整理
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品評価損 | 500 | 繰越商品 | 500 ※1 |
※1 帳簿棚卸原価10,000円-(売価11,000円-見積販売直接経費1,500円)=500円
翌期首
仕訳なし |
まとめ
- 洗替法と切放法の違いは、翌期首に商品評価損の戻入れの仕訳をするかどうか。
- 洗替法は翌期首に当初の取得原価に戻すための仕訳をする。
- 切放法は簿価切下げ後の帳簿価額を使用するため、翌期首の仕訳は不要。
- 商品低価評価勘定(洗替法)を採用した場合、翌期首に商品低価評価勘定を収益に戻し入れる。