貸倒懸念債権 キャッシュ・フロー見積法

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【貸倒懸念債権】キャッシュ・フロー見積法の仕訳と翌年度以降の処理

2020年4月30日

貸倒懸念債権に対する貸倒引当金の設定方法には、キャッシュ・フロー見積法と財務内容評価法があります。

貸倒懸念債権とは、経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているかまたは生じる可能性が高い債務者に対する債権です。
つまり、債務者がお金を返してくれるかどうか疑わしい債権のことです。
会社の経営が悪化したことを理由に貸付金の利率を下げて欲しいと交渉してきた債務者に対する貸付金などが該当します。

今回はキャッシュ・フロー見積法について説明します。


キャッシュ・フロー見積法

キャッシュ・フロー見積法は、債権の元本及び利息について、元本の回収及び利息の受取りが見込まれるときから当期末までの期間にわたり、取得当初の約定利子率で割り引いた現在価値の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法です。

債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積もることが可能な債権について適用されます。

貸倒見積高=債権の帳簿価額-債権に係る将来キャッシュ・フローの割引現在価値

 

会計処理の方法

債権の帳簿価額と債権に係る将来キャッシュ・フローの割引現在価値との差額を貸倒引当金として設定します。割引計算に使用する約定利子率は、「当初の約定利子率」を使用します。

なぜ変更後の利子率ではなくて「取得当初の利子率」で割り引くの?
取得当初の見積り額からいくら減少したかを算定するのが目的だからだよ。

 

決算時

債権の帳簿価額と債権に係る将来キャッシュ・フローの割引現在価値との差額を貸倒引当金として設定します。割引計算に使用する約定利子率は、「当初の約定利子率」を使用します。

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金繰入 xxx 貸倒引当金 xxx *1

*1 債権の帳簿価額-債権に係る将来キャッシュ・フローの割引現在価値=貸倒見積高

 

条件緩和後の利払時

時の経過によって生じた割引現在価値の増加分は、貸倒引当金の減額処理を行います。減額をした貸倒引当金は受取利息として処理をするのが原則ですが、貸倒引当金戻入で処理することできます。

借方 金額 貸方 金額
現金預金 xxx *2 受取利息 xxx *1
貸倒引当金 xxx *3

*1 前期末現在価値×当初の約定利子率
*2 債権金額×変更後の約定利子率
*3 当初の約定利子率による当期末の割引現在価値-当初の約定利子率による前期末の割引現在価値または差額

 

相手勘定を「受取利息」で処理する理由

なぜ、貸倒引当金を取り崩したときの相手勘定が「受取利息」になるの?
債権の割引現在価値は時間の経過により増加するため、それに対応して貸倒見積高が減少するんだ。
この時間の経過による貸倒見積高の減少分を表すために「受取利息」で処理するんだよ。

 

具体例:キャッシュ・フロー見積法の適用時の処理

次の資料の基づき、1.貸付日、2.利払日、3.決算日における仕訳を示しなさい。なお、円未満の端数が生じた場合は、四捨五入する。(会計期間:x1年4月1日~x2年3月31日)

(資料)
当社はA社に対して、下記の条件により貸付けを行った。

貸付額 1,000,000円
貸付日 x1年4月1日
返済期日 x4年3月31日(一括返済)
約定利子率 年5%
利払日 毎年3月31日(年1回)

この貸付金に関し、x2年3月31日の利払後にA社から経営悪化を理由に条件緩和の申し出があり、当社は約定利子率を年2%に引き下げることに合意した。これによりA社に対する貸付金を貸倒懸念債権とし、キャッシュ・フロー見積法に基づいて貸倒見積高を算定することにした。

【解答・解説】
1.貸付日

借方 金額 貸方 金額
貸付金 1,000,000 現金預金 1,000,000

2.利払日

借方 金額 貸方 金額
現金預金 50,000 受取利息 50,000

3.決算日

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金繰入 55,782 貸倒引当金 55,782 *1

*1 貸付金1,000,000円-割引現在価値944,218円=55,782円

 

x3年3月31日 x4年3月31日 合計
条件緩和後の将来CFの見積額 20,000 1,020,000 1,040,000
当初の約定利率5%に基づく割引率 ÷1.05 ÷(1.05)2
割引現在価値 19,048 925,170 944,218

 

具体例:キャッシュ・フロー見積法の翌年度の処理

次の資料の基づき、決算日における仕訳を示しなさい。なお、円未満の端数が生じた場合は、四捨五入する。(会計期間:x2年4月1日~x3年3月31日)

前期末においてA社より前期末の利息の受け取った後、経営悪化を理由に契約条件緩和の申し出があったため、金利を年2%に引き下げる改定を行った。当該貸付金については前期末より貸倒懸念債権に区分し、キャッシュ・フロー見積法により貸倒引当金を設定している。なお、利息受け取り時の処理が未処理である。

(資料)
当社はA社に対して、下記の条件により貸付けを行った。

貸付額 1,000,000円
貸付日 x1年4月1日
返済期日 x4年3月31日(一括返済)
約定利子率 年5%
利払日 毎年3月31日(年1回)

(注)前期末の貸付金の割引現在価値は944,218円である。

【解答・解説】
決算日

借方 金額 貸方 金額
現金預金 20,000 *2 受取利息 47,211 *1
貸倒引当金 27,211 *3

*1 前期末割引現在価値944,218円×5%=47,211円
*2 貸付金1,000,000円×2%=20,000円
*3 当期末の割引現在価値971,429円-前期末の割引現在価値944,218円=27,211円または差額

 

x4年3月31日 合計
条件緩和後の将来CFの見積額 1,020,000 1,020,000
当初の約定利率5%に基づく割引率 ÷1.05
割引現在価値 971,429 971,429

 

まとめ

貸倒見積高=債権の帳簿価額-債権に係る将来キャッシュ・フローの割引現在価値

債権の帳簿価額と債権に係る将来キャッシュ・フローの割引現在価値との差額を貸倒引当金として設定する。

割引計算に使用する約定利子率は、「当初の約定利子率」を使用する。

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