「預け金」と「預り金」は一文字違いで混同しがちです。「預け金」は「預り金」の対義語に相当するものです。
この記事では、「預け金」と「預り金」の違いについて解説します。
目次
預け金とは
預け金とは、取引先、役員、従業員などに対して一時的に金銭を預けた場合に使用する勘定科目のことをいいます。
したがって、返還されないものは「預け金」に該当しません。
なお、取引先に対して営業保証金を預けた場合は、「預け金」ではなく「差入保証金」という勘定科目を使用することもあります。
決算書の表示区分
預け金は、貸借対照表(B/S)の資産の部の流動資産に計上する勘定科目です。
預け金は一時的に預けて、後日返還してもらう権利があるので資産に該当します。
1年以内に返還してもらう預け金は流動資産に計上し、1年を超えてから返還してもらう預け金は固定資産の「投資その他の資産」に計上します。
なお、1年を超えてから返還してもらうものは「長期預け金」勘定で、投資その他の資産に計上します。
勘定科目(表示科目) | 決算書 | 表示区分 |
預け金 | 貸借対照表 | 流動資産 |
長期預け金 | 貸借対照表 | 固定資産:投資その他の資産 |
信用取引と預け金
預け金は、信用取引で有価証券を売却した場合に、その売却代金を証券会社に対する担保差入金として処理するときに使用されます。
信用取引とは、現金や株式を担保として証券会社に預けて、証券会社から現金または株式を借りて株の売買する取引のことをいいます。
通常、有価証券を購入するためには資金が必要で、売却するためには有価証券が必要ですが、信用取引を使えば資金や有価証券がなくても取引が可能になります。
信用取引による買い付けの場合、有価証券を購入してすぐに担保として差し入れたものとみなして、その購入代金は証券会社からの債務として処理されます。
信用取引による売却の場合、その売却代金は証券会社に対する担保差入金となり、「預け金」として処理されます。
預り金とは
預り金とは、取引先、役員、従業員などに対して一時的に金銭を預かった場合に使用する勘定科目のことをいいます。
したがって、返還しないものは「預り金」に該当しません。
決算書の表示区分
預り金は、貸借対照表(B/S)の負債の部の流動負債に計上する勘定科目です。
預り金は一時的に預かって、後日返還しなければならない義務があるので負債に該当します。
1年以内に返還する預り金は流動負債に計上し、1年を超えて返還する預り金は固定負債に計上します。
なお、従業員の社内預金など1年を超えて返還するものは「長期預り金」勘定で固定負債に計上し、取引先から受け取った営業保証金などで1年を超えて返還するものは「預かり保証金」勘定で固定負債に計上します。
役員または従業員からの預り金の金額が負債・純資産の合計額の1%を超える場合には「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の第50条に基づいて、別掲が必要となります。
勘定科目(表示科目) | 決算書 | 表示区分 |
預り金 | 貸借対照表 | 流動負債 |
長期預り金 | 貸借対照表 | 固定負債 |
預り金に該当するもの
- 源泉所得税
- 役員や従業員の社内預金
- 取引先から受け取った営業保証金
- 身元保証金
- 財形貯蓄 など
源泉所得税は、会社が従業員に支払うべき給与の一部を預かって、従業員の代わりに国に納付します。そのときに使用する勘定科目が「預り金」です。
預け金と預け金の違い
預け金とは、取引先、役員、従業員などに対して一時的に金銭を預けた場合に使用する勘定科目のことをいいます。
預り金とは、取引先、役員、従業員などに対して一時的に金銭を預かった場合に使用する勘定科目のことをいいます。
したがって、預け金と預り金の違いは、「預けた側」か「預かった側」どうかです。
「預け金」と「預り金」は対義語に相当するものと言えます。
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仕訳例
設例1
当社は、A社に資金の運用を委託し、A社指定の口座に500万円を当座預金から振り込んだ。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
預け金 | 5,000,000 | 当座預金 | 5,000,000 |
資金の運用を委託した金銭は、「預け金」勘定で処理します。
設例2
下記の給与明細書に基づいて、従業員の給与を普通預金口座から振り込んだ。
【給与明細書】
基本給275,000円、時間外手当20,000円、源泉所得税及び復興特別所得税10,000円、住民税8,000円、社会保険料47,000円(雇用保険料3,000円、健康保険料17,000円、介護保険料2,000円、厚生年金保険料25,000円)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
給与手当 | 295,000 ※1 | 普通預金 | 235,000 ※2 |
預り金(源泉所得税分) | 10,000 | ||
預り金(住民税分) | 8,000 | ||
預り金(社会保険料) | 47,000 |
※1 基本給275,000円+時間外手当20,000円=295,000円
※2 給与手当295,000円-預り金65,000円(10,000円+8,000円+47,000円)=235,000円
源泉所得税、住民税、社会保険料は「預り金」勘定で処理します。
まとめ
- 預け金とは、取引先などに対して一時的に金銭を預けた場合に使用する勘定科目で流動資産に計上する。
- 預り金とは、取引先などに対して一時的に金銭を預かった場合に使用する勘定科目で流動負債に計上する。
- 預け金と預り金の違いは、「預けた側」か「預かった側」かどうか。
- 「預け金」と「預り金」は対義語に相当する。