日本は「国民皆保険制度」を採用しており、すべての国民が何らかの公的保険に加入しています。通常、会社員は「社会保険(健康保険)」に加入し、個人事業主や年金受給者は「国民健康保険」に加入します。
経営者だけでなく、経理職や事務職など、関係者全員がこれらの公的保険制度に関する基本的な理解を持つことは非常に重要です。今回は、社会保険と国民健康保険の違いについて、わかりやすく解説します。
\ 期間限定20%OFFセール中 /
合格を目指して学習スタート!
社会保険とは
社会保険は、国民の生活を支えるためのセーフティネットとして、「社会保障」の一環を成しています。仕事中や生活の中で事故や病気、出産や失業などの困難な状況に直面した際に、生活を守るために支援してくれる制度です。
社会保険制度の概要
社会保険制度は、国民が一定額の保険料を負担し、必要な際に保険金を受け取る仕組みです。
社会保険は、病気や事故、高齢による生活支援など、さまざまな場面で役立ちます。公的な社会保険は一定の条件を満たすと強制加入となりますが、保険料を支払わないと給付は受けられません。
社会保険の種類
社会保険には「医療保険」「年金保険」「介護保険」「労災保険」「雇用保険」の5種類があります。ここでは、その中でも「狭義の社会保険」にあたる「医療保険」「年金保険」「介護保険」について解説します。
- 医療保険
仕事外で発生した病気やケガを保障します。また、予防的な受診料や、休職中の傷病手当金も含まれます。 - 年金保険
65歳に達した際に受け取る公的年金です。厚生年金に加入すると、国民年金に加えて年金額が増えます。年金には、障害年金や遺族年金もあり、どちらも厚生年金保険に加入している場合、給付額が増えます。 - 介護保険
介護が必要になった際、負担する費用を軽減する制度です。40歳になると加入義務が発生し、64歳まで健康保険料と一緒に支払います。65歳以上になると年金から自動的に天引きされます。
社会保険への加入条件
社会保険に加入するためには、事業所と従業員が一定の条件を満たす必要があります。
事業所の加入条件
法人事業所や株式会社には、社会保険加入が法的に義務付けられています。また、個人事業主でも、従業員が常時5人以上であれば社会保険に加入しなければなりません。一部のサービス業は加入が任意となりますが、従業員を雇用している場合は必ず加入手続きを行う必要があります。
従業員の加入条件
適用事業所で常用的に雇用される従業員は、国籍や性別に関係なく健康保険に加入し、70歳未満であれば厚生年金保険にも加入します。「常用的に雇用される」とは、雇用契約書の有無に関係なく、給与や賃金を受け取る雇用関係を指します。試用期間中でも報酬が支払われれば、社会保険に加入対象となります。
加入条件の詳細
正社員に加えて、パートタイマーやアルバイトでも、所定労働時間や月間労働日数が、正社員の4分の3以上であれば社会保険に加入することが求められます。
社会保険料の計算方法と負担割合
社会保険料は、従業員の給与額を元に計算されます。まず、毎月の給与額を基に「標準報酬月額」を算出します。この「標準報酬月額」は、給与の額に応じた等級に分類され、その等級に対応する保険料率を掛け算することで、実際の社会保険料が決まります。
社会保険料の計算手順
- 標準報酬月額の算出
毎月の給与をもとに「標準報酬月額」を決定します。給与が一定額の場合、その額に近い定められた等級が適用されます。 - 適用される等級に基づく保険料率の適用
標準報酬月額に基づく等級が決まった後、その等級に応じた保険料率が適用されます。 - 保険料の算出
標準報酬月額に保険料率を掛け算し、月ごとの保険料額が算出されます。
社会保険料の負担割合
社会保険料は、企業と従業員でそれぞれ半分ずつ負担します。例えば、協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合、報酬月額に基づいた負担額が決まり、企業と従業員でその金額を折半します。具体的な負担額は等級ごとに決まるため、各等級に対応した保険料額を参考にしてください。
出典:全国健康保険協会「令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
社会保険と国民健康保険の違い
社会保険に加入していない場合、国民健康保険に加入することになります。個人事業主やフリーランスは通常、国民健康保険に加入します。
国民健康保険とは
国民健康保険は、健康保険に加入していないすべての住民を対象とする医療保険制度です。都道府県や市区町村が保険者となる「市町村国保」と、特定の業種別に設立される「組合国保」の2つの形態があります。
社会保険と国民健康保険の違い
項目 | 社会保険(健康保険) | 国民健康保険 |
---|---|---|
対象者 | 会社員や公務員、正社員の3/4以上勤務する従業員 | 自営業者や社会保険未加入の従業員 |
保険料の算出方法 | 直近3カ月の給与平均を基に算出 | 医療分、後期高齢者支援金分、介護分などから算出 |
「扶養」の適用 | 扶養家族の適用あり | 扶養制度なし、家族は個別加入 |
扶養の考え方の違い
社会保険では、配偶者などが扶養に該当すれば「被扶養者」として保険に加入できます。そのための条件には、年間収入が130万円未満(60歳以上は180万円未満)であり、かつその収入が被保険者の収入の半分以下であることが求められます。これに対して、国民健康保険には扶養制度はなく、家族全員が個別に加入することになります。
国民健康保険から社会保険への切り替え手続き
従業員が国民健康保険から社会保険に切り替える場合、事業所は加入手続きを行います。入社日から5日以内に日本年金機構に「被保険者資格取得届」を提出し、扶養家族がいる場合は「健康保険被扶養者(異動)届」も併せて提出します。国民健康保険から脱退する手続きは、居住地の自治体で行います。
従業員退職時に適用事業所が行う手続き
従業員が退職した場合、事業所は退職から5日以内に「被保険者資格喪失届」を日本年金機構に提出します。また、退職した従業員から健康保険証を回収し、日本年金機構に返却します。
退職後、従業員は国民健康保険に加入するか、ご家族の保険に扶養として加入する選択肢もあります。退職前の健康保険に退職後も加入する任意継続制度も利用可能です。この場合、退職後20日以内に手続きを行う必要があります。
まとめ
日本の社会保険制度は、国民の生活を支える重要な制度であり、医療保険、年金保険、介護保険、労災保険、雇用保険の5種類が含まれます。会社員は社会保険に加入し、個人事業主やフリーランスは国民健康保険に加入します。
社会保険には扶養の概念があり、家族を被扶養者として保険に適用できる点が特徴です。国民健康保険には扶養制度がなく、家族は個別に加入する必要があります。
従業員が退職した際、企業は社会保険の喪失手続きを行い、退職後の選択肢として任意継続制度も案内することが求められます。
人気ファイナンシャルプランナー2級の合格率の推移【きんざいと日本FP協会の比較】
\ 期間限定20%OFFセール中 /
合格を目指して学習スタート!