本試験は、各科目で幅広い知識と応用力が求められる内容でした。特に商業簿記、工業簿記、会計学、原価計算の4科目において、それぞれ特徴的な問題が出題されました。以下に、各科目の詳細な振り返りと解答戦略をまとめます。
目次
商業簿記
難易度: 普通
ボリューム: 少し多め。理解力だけでなく処理能力も問われる内容
目標点数: 17~18点(7割)
商業簿記は基本に忠実な良問でしたが、ボリュームがやや多く、理解力だけでなく処理能力も求められる内容でした。特に退職給付会計や連結会計が印象的でした。退職給付会計はテキストで見かける基本的な問題でしたが、解答方法に少しひねりが加えられており、普段通りのパターンでは解けなかった方も多かったかもしれません。連結会計については、個別財務諸表の処理が前提だったため、難易度自体は2級レベルでしたが、正答が難しい問題でした。
解答戦略: 基本論点をしっかり押さえて、得意な部分で得点を稼ぐことが重要です。特に退職給付や連結会計は計算ミスに気をつけながら進めるとよいでしょう。
会計学
難易度: 普通~やや難しめ
分量: やや少なめ
目標点数: 17点
会計学は出題される論点に幅があり、出来不出来が大きく分かれた印象です。特に「事業分離」や「分配可能額」などのBランクからCランクの論点が多く、これを押さえていないと足切りラインに近づく可能性がありました。テキストレベルの設例問題が多く出題されたため、基礎的な内容をしっかり理解していれば、高得点を狙える科目でした。
解答戦略: 事業分離の処理は毎年出題されているため、事前に対策しておくことが得点に直結します。また、理論の得点は安定しやすいため、早めに手をつけると時間に余裕を持って取り組めます。
工業簿記
難易度: やや難しめ
ボリューム: 多い。膨大な資料が与えられ、初めて見ると複雑に感じるが、問題自体は本質的にはシンプル
目標点数: 15点
本問では、膨大な資料に圧倒される可能性があります。特に、工程別組別総合原価計算のテーマで、F01組、F02組、F03組、F04組と複数の組に関する情報が与えられ、品番なども多く記載されており、最初はその内容に圧倒されるかもしれません。しかし、実際には資料の読み解き方が重要で、冷静に分析しながら進めることで解ける問題です。
本問のポイントは、与えられた膨大な資料を整理し、勘定連絡を正確に描けるかどうかです。特に、「相互配賦法」や「総平均法」などの計算手法を正しく使いこなせるかがカギとなります。見た目は複雑に見えますが、計算の本質を理解していれば、比較的短時間で解ける構造になっています。
また、資料整理においては「材料の消費」や「直接作業時間」に関する膨大なデータが与えられますが、これらの情報を正確に読み取ることで、計算量が多くても苦になりません。資料をどのように整理し、どの情報をどこで使うべきかを判断する能力が求められます。
一方で、問題文には若干の曖昧な部分もあり、「統制勘定としての材料勘定」など、用語や前提条件に関して疑問を感じる場面がありました。特に、「補助簿」や「相互配賦法」の解釈に悩む受験生が多かったと思います。このため、解答にばらつきが生じた可能性があり、作問にはもう少し配慮が必要だったと感じました。
総じて、資料を適切に読み取る力と計算の本質的な理解があれば、高得点を狙えます。しかし、試験中の緊張や膨大な資料、曖昧な指示に戸惑うと、得点を伸ばすのが難しくなるでしょう。
解答戦略: 資料を読み取る力を高め、ひねりのある問題にも対応できるように訓練しておくことが大切です。時間配分には十分注意し、計算問題は間違えないよう慎重に進めることが求められました。
原価計算
難易度: 普通
分量: 少なめ
目標点数: 21点
原価計算は、過去問に似た問題が多く出題されました。1問目の予算実績差異分析は基本的な問題ですが、少しひねりが加えられており、緊張した状況での解答は難しかったかもしれません。2問目の最適セールス・ミックスは、過去問と同様の問題であり、知識をしっかりと身につけていれば取りやすかったでしょう。しかし、予算実績差異分析のひねりを解けなかった場合、得点が低くなる可能性がありました。
解答戦略: 予算実績差異分析のひねりに対する理解を深め、最適セールス・ミックスのような基本問題は確実に得点を取ることが大切です。全体のバランスを見ながら、確実に得点できる部分で得点を積み重ねていきましょう。
総評
全体的に、商業簿記と工業簿記がやや難しめの内容であった一方、会計学と原価計算で安定して得点できる科目が多かったです。特に会計学は、普段の勉強の成果が出やすい科目でした。各科目の特徴を踏まえた戦略的なアプローチが重要で、試験全体のバランスを考慮しながら得点を積み上げることが求められる試験でした。