この記事では、有形固定資産の取得原価と付随費用の種類について解説します。
目次
有形固定資産の勘定科目
有形固定資産とは、企業の経営活動のために長期にわたって使用する目的で所有している有形の資産のことをいいます。
代表的なものは下記のとおりです。
勘定科目 | 具体例 |
建物 | 店舗、事務所、工場、倉庫などの営業用の建物 |
建物附属設備 | 電気設備、給排水設備などで建物の利用価値を高めるもの
(注)貸借対照表上、「建物」に含めて表示する。 |
構築物 | 舗装道路(アスファルト)、塀などの土木設備、煙突、広告塔 |
機械装置 | 製品の製造に使用される機械や装置 |
車両運搬具 | トラック、乗用車などの自動車 |
備品 | 机、椅子、コピー機、コンクリート、金庫、商品陳列棚など |
土地 | 店舗用の土地、事務所等の土地など |
建設仮勘定 | 建設中の建物等のために支払った手付金・前渡金 |
有形固定資産は、様々な勘定科目が使用されます。
簿記検定で解答する際は、問題文にある勘定科目を使用してください。
問題文に指示がない場合は、試算表に記載されているのと同じ勘定科目を使用してください。
購入、交換、贈与、現物出資、自家建設の取得原価
有形固定資産の取得原価は、取得の形態によって算定方法が異なります。
取得の形態と取得原価の関係は下記のとおりです。
形態 | 取得原価 |
購入 | (購入代価-値引・割戻額)+付随費用 |
交換 | 提供した自己資産の帳簿価額又は時価 |
贈与 | 公正な評価額 |
現物出資 | 公正な評価額 |
自家建設 | 適正に計算された製造原価 |
付随費用の種類
付随費用の種類は大きく分けると「取得経費」「土地・建物に係る費用」「事業供用費用」の3種類あります。
種類 | 具体例 |
取得経費 | 引取費用、登録料、登録免許税、不動産取得税、自動車取得税、関税など |
土地・建物に係る費用 | 地ならし代、仲介手数料など |
事業供用費用 | 試運転費、据付費など |
事業の用に供するまでに要した付随費用は、すべて取得原価に加算されます。
仕訳パターン
購入
建物1,000円を購入し、不動産取得税100円、仲介手数料50円とともに現金で支払った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
建物 | 1,150 ※ | 現金 | 1,150 |
※ 1,000円+100円+50円=1,150円
交換
・同種の資産の場合
当社所有の土地(帳簿価額1,700円、時価2,000)と他社所有の土地(時価2,050円)を交換し、現金100を支払った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
土地 | 1,800 ※ | 土地 | 1,700 |
現金 | 100 |
※ 提供した土地の帳簿価額1,700円+現金100円=1,800円
・異種の資産の場合
当社所有の有価証券(帳簿価額600円、時価700円)と他社所有の建物(時価800円)を交換した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
建物 | 700 ※ | 有価証券 | 600 |
有価証券売却損益 | 100 |
※ 提供した有価証券の時価700円
贈与
土地(時価5,000円)の贈与を受けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
土地 | 5,000 | 土地受贈益 | 5,000 |
(注)土地受贈益は損益計算書の「特別利益」に計上します。
現物出資
土地(時価1,500円)の現物出資を受け、株式100株を交付した。なお、株主資本の増加額はすべて資本金とする。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
土地 | 1,500 | 資本金 | 1,500 |
自家建設
自家建設した建物が完成した。完成までに要した工事原価の内訳は、前期発生額300円、当期発生額700円である。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
建物 | 1,000 | 建設仮勘定 | 300 |
未成工事支出金 | 700 |
例題
設例1
次の取引の仕訳を示しなさい。
当社は備品10,000円を購入し、据付費1,500円とともに現金で支払った。
【解答・解説】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
備品 | 11,500 ※ | 現金 | 11,500 |
※ 10,000円+1,500円=11,500円
設例2
次の取引について、当社とA社の仕訳をそれぞれ示しなさい。
当社所有の土地(帳簿価額4,500円、時価5,000)とA社所有の土地(帳簿価額4,700円、時価4,900円)を交換した。
【解答・解説】
当社
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
土地 | 4,500 ※ | 土地 | 4,500 |
※ 提供した土地(当社)の帳簿価額4,500円
A社
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
土地 | 4,700 ※ | 土地 | 4,700 |
※ 提供した土地(A社)の帳簿価額4,700円
設例3
次の取引について、当社とB社の仕訳をそれぞれ示しなさい。
当社所有の有価証券(帳簿価額2,050円、時価2,300円)とB社所有の土地(帳簿価額2,000円、時価2,100円)を交換した。
【解答・解説】
当社
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
土地 | 2,300 ※ | 有価証券 | 2,050 |
有価証券売却損益 | 250 |
※ 提供した有価証券の時価2,300円
B社
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
有価証券 | 2,100 ※ | 土地 | 2,000 |
土地売却益 | 100 |
※ 提供した土地の時価2,100円
設例4
次の取引の仕訳を示しなさい。
備品(時価3,000円)を取引先から無償で贈与を受けた。
【解答・解説】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
備品 | 3,000 | 備品受贈益 | 3,000 |
設例5
次の取引の仕訳を示しなさい。
備品(時価3,000円)を取引先から500円で譲受け、現金で支払った。
【解答・解説】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
備品 | 3,000 | 現金 | 500 |
備品受贈益 | 2,500 ※ |
※ 貸借差額
低額譲渡の場合、差額が備品受贈益に計上されます。
(借方)備品500 (貸方)現金500という仕訳をしないように注意してください。
設例6
次の取引の仕訳を示しなさい。
土地(時価3,000円)の現物出資を受け、株式100株を交付した。
なお、株主資本の増加額はすべて資本金とする。
【解答・解説】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
土地 | 3,000 | 資本金 | 3,000 |
設例7
次の取引の仕訳を示しなさい。
自家建設した建物が完成した。完成までに要した工事原価の内訳は、前期発生額500円、当期発生額1,000円である。
【解答・解説】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
建物 | 1,500 | 建設仮勘定 | 500 |
未成工事支出金 | 1,000 |
まとめ
- 有形固定資産の取得原価は、取得の形態(購入、交換、贈与など)によって算定方法が異なる。
- 取得原価に加算する付随費用は、事業の用に供するまでに要したもの全て。