仕訳のルールは簿記の基本であり、初期にしっかり学んでおくことが重要です。しかし、教材では十分に説明されていないことが多いです。
簡潔に言うと、仕訳とは、「資産・負債・資本・収益・費用」の増減を借方と貸方に記入する作業です。資産と費用の増加は借方に、負債・資本・収益の増加は貸方に記入することが、仕訳の基本的なルールです。
この記事では、仕訳のルールと書き方について解説します。
目次
仕訳のルール
仕訳には次のようなルールがあります。このルールをしっかり身につけましょう。
- 資産の増加は借方(左側)に記入
- 資産の減少は貸方(右側)に記入
- 負債の増加は貸方(右側)に記入
- 負債の減少は借方(左側)に記入
- 資本の増加は貸方(右側)に記入
- 資本の減少は借方(左側)に記入
- 費用の発生は借方(左側)に記入
- 収益の発生は貸方(右側)に記入
この8つが「取引の8要素」と呼ばれるものです。さらに、以下の2つも覚えておくべきです。
- 費用の減少は貸方(右側)に記入
- 収益の減少は借方(左側)に記入
この2つは取引の8要素には含まれていませんが、実際に使うことがあるので覚えておくと役立ちます。
また、借方が左側、貸方が右側ということも今の段階でしっかり覚えておきましょう。
取引の8要素の覚え方
取引の8要素(または10要素)を効率よく覚える方法をご紹介します。先ほど挙げた箇条書きで丸暗記するのは非効率的です。まず、損益計算書と貸借対照表のイメージ図を確認してください。
この図に描かれているそれぞれの項目が増加する側だと覚えるのが最も効果的で、応用も効きます。借方に書かれているのは資産・費用なので、資産や費用が増加する際には借方に記入します。
一方、貸方に書かれているのは負債・資本・収益なので、負債・資本・収益が増加するときには貸方に記入します。ちなみに、減少する場合はすべて逆の処理になります。
このように覚えることで、効率的に学習できます。貸借対照表と損益計算書の図も非常に重要なので、セットでしっかり身につけましょう。
仕訳の書き方
仕訳は必ず、借方(左側)と貸方(右側)に分けて書きます。借方と貸方に分けて帳簿に記入する理由は、すべての取引は必ず2つの側面を持っているからです。
帳簿に記入するグループとして、「資産・負債・資本・収益・費用」があります。「すべての取引は必ず2つの側面を持っている」というのは、「資産・負債・資本・収益・費用」のどれか一つが増減すると、必ずもう一つが増減するという意味です。
例えば、資産の増加を考えてみましょう。資産が増加するということは、現金などの財産や売掛金などの権利を得たということです。現金の増加の理由としては次のようなものがあります。
1. 現金売上の場合
商品を販売して代金を受け取った場合、収益が増加します。
例:商品を150,000円で売った場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 150,000 | 売上 | 150,000 |
• 借方(左側):現金 150,000円
→ 商品代金を現金で受け取ったので、現金が増加します。
• 貸方(右側):売上 150,000円
→ 商品を売ったことで売上(収益)が増加します。
2. 現金を借りた場合
企業が資金を借りた場合、借入金(負債)が増加します。
例:現金100,000円を銀行から借りた場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 100,000 | 借入金 | 100,000 |
• 借方(左側):現金 100,000円
→ 銀行からお金を借りて、現金が増えます。
• 貸方(右側):借入金 100,000円
→ 借りたお金は負債なので、借入金という負債が増加します。
3. 貸していた現金を返してもらった場合
貸し付けたお金が返済された場合、貸付金という資産が減少します。
例:貸付金100,000円が返済された場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 100,000 | 貸付金 | 100,000 |
• 借方(左側):現金 100,000円
→ 返済されたお金は現金として受け取るので、現金が増加します。
• 貸方(右側):貸付金 100,000円
→ 返済された金額は貸付金という資産の減少となります。
4. 現金の出資を受けた場合
企業が外部から出資を受けた場合、資本が増加します。
例:株主から100,000円の出資を受けた場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 100,000 | 資本金 | 100,000 |
• 借方(左側):現金 100,000円
→ 出資を受けて現金が増加します。
• 貸方(右側):資本金 100,000円
→ 出資されたお金は企業の資本として扱われるため、資本金が増加します。
このように、「資産・負債・資本・収益・費用」のどれか一つが増減すると、必ずもう一つ何かが増減するのです。仕訳はどの勘定科目が増減するのかを正確に把握することが大切です。
仕訳を勉強する際のコツ
仕訳を学ぶ際には、効率的かつ楽しく学習を進めることが大切です。ここでは、仕訳を学習する上で意識すべきコツを紹介します。
1. 仕訳を丸暗記しないこと
仕訳を丸暗記してしまう人がいますが、この方法は効率的ではありません。確かに、丸暗記だけで簿記3級の合格は可能です。しかし、丸暗記では学習が単調になり、覚えた内容を長期的に保持するのは難しくなります。
効率よく仕訳を学ぶためには、次の2点を意識することが重要です。
- 取引を具体的にイメージする
- 仕訳の意味を考える
取引を具体的にイメージする
取引を具体的にイメージすることで、仕訳の理解が格段に深まります。仕訳は単なる数字の並びではなく、実際の取引を表現するものです。取引の内容がイメージできないままでは、仕訳を理解することは難しいでしょう。
簿記を学んでいる人が苦手とする論点の多くは、取引内容が複雑であったり、日常生活で馴染みのない内容であるため、イメージしづらいことが原因です。取引を具体的に思い描くことで、理解が深まり、仕訳の意味が明確になります。
仕訳の意味を考える
仕訳には必ず意味があり、意味のない仕訳は存在しません。もし、仕訳の意味が分からなければ、それは正しい仕訳ではないということです。仕訳を学ぶ際には、その意味をしっかりと考えましょう。
- なぜこの仕訳を切るのか?
- なぜこの仕訳は間違っているのか?
- なぜこの金額が設定されているのか?
- なぜこの金額ではダメなのか?
これらの問いを自分に投げかけながら学ぶことで、仕訳の理解が深まり、記憶にも定着しやすくなります。理解せずに暗記しても、すぐに忘れてしまい、覚えにくくなります。理解を深めてから暗記を進めることが、効果的な学習に繋がります。
「取引を具体的にイメージ → 仕訳を理解 → 仕訳を暗記」という流れで学習を進めると、スムーズに簿記試験の合格が目指せます。
2. 期中仕訳と決算整理仕訳を区別する
簿記を学ぶ際に非常に重要なのは、期中仕訳と決算整理仕訳をきちんと区別することです。この2つの仕訳は異なる目的を持っているため、混同してしまうと学習に支障をきたします。
例えば、決算整理前残高試算表の金額を求める問題では、どの仕訳を切るべきかが分からなくなってしまうことがあります。さらに、簿記一巡の手続きにおいて、各勘定科目がどのように流れているのかをイメージできなくなることもあります。
そのため、期中仕訳と決算整理仕訳の違いを理解し、それぞれを意識しながら学習を進めることが非常に重要です。これを区別できるようになると、簿記の問題を解く際にスムーズに対応できるようになります。
まとめ
仕訳は簿記の基礎であり、取引の正確な記録を行うための重要なステップです。
この記事で紹介したルールや書き方を理解することで、効率的に学習を進め、簿記の知識をしっかりと身につけることができます。
仕訳を丸暗記するのではなく、取引を具体的にイメージし、その意味を考えながら学ぶことが効果的です。また、期中仕訳と決算整理仕訳を区別し、実際の取引を正確に把握することが、簿記試験の合格に向けた大きな一歩となります。