簿記を学ぶ上で最初に理解すべき基本が「仕訳」です。仕訳は、取引を帳簿に記録するための方法で、簿記の基礎となります。仕訳を正しく理解することで、簿記全体の学習がスムーズになります。
この記事では、「仕訳の基本概念」から実際の記入方法、具体例までを解説します。難しく感じるかもしれませんが、取引をどのように記録するかを理解すれば、簿記の他の部分も自然に身につきます。それでは、仕訳の基本から見ていきましょう。
目次
仕訳の基本概念
仕訳は、借方と貸方のセットで行います。取引の8要素(または10要素)に基づくと、次の25パターンが考えられます。
借方/貸方 | 資産の減少 | 負債の増加 | 資本の増加 | 収益の発生 | 費用の減少 |
---|---|---|---|---|---|
資産の増加 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
負債の減少 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
資本の減少 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
収益の減少 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
費用の発生 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
よく出てくるパターン
これらの25パターンすべてが均等に出題されるわけではありません。よく出てくるのは次の6つの組み合わせです。
借方 | 貸方 |
---|---|
資産の増加 | 資産の減少 |
資産の増加 | 負債の増加 |
資産の増加 | 資本の増加 |
資産の増加 | 収益の発生 |
負債の減少 | 資産の減少 |
費用の発生 | 資産の減少 |
注目すべき点は、これら6つの組み合わせにおいて、すべて資産の増減が関係していることです。
仕訳を考える際には、まず資産に注目すれば、ほとんどの仕訳をカバーできるということです。資産以外のグループも理解し覚える必要がありますが、資産に注目することで仕訳を簡単に考えることができます。
仕訳の具体例
具体例1:「(借)資産の増加/(貸)資産の減少」
資産同士の組み合わせである『(借)資産の増加/(貸)資産の減少』について考えてみましょう。
財産の購入
建物や備品などの財産を購入する場合、代金を支払うことで資産が減少し、その代わりに新たに購入した資産が増加します。
例題
備品500,000円を現金で購入した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
備品 | 500,000 | 現金 | 500,000 |
現金という資産が500,000円減少します。資産の減少は貸方に記入するので、『(貸)現金300,000』となります。一方、備品という資産が500,000円増加します。資産の増加は借方に記入するので、『(借)備品500,000』となります。
投資
余ったお金を運用するためにお金を貸し付ける場合、貸し付けたお金という資産が減少し、返済を請求する権利である「貸付金」が資産として増加します。
例題
現金1,000,000円を資産運用のため貸し付けた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸付金 | 1,000,000 | 現金 | 1,000,000 |
現金という資産が1,000,000円減少します。資産の減少は貸方に記入するので、『(貸)現金1,000,000』となります。貸付金という資産が1,000,000円増加します。資産の増加は借方に記入するので、『(借)貸付金1,000,000』となります。
債権の回収
売掛金などの債権を実際の財産で回収すると、その債権は消滅し、資産が増加します。
例題
売掛金のうち600,000円を現金で受け取った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 600,000 | 売掛金 | 600,000 |
現金という資産が600,000円増加します。資産の増加は借方に記入するので、『(借)現金600,000』となります。売掛金という資産が600,000円減少します。資産の減少は貸方に記入するので、『(貸)売掛金600,000』となります。
具体例2:「(借)資産の増加/(貸)負債の増加」
借入金
事業を運営するために、銀行などからお金を借りる場合、現金などの資産が増加し、その一方で返済義務が生じる負債も増加します。
例題
銀行から現金3,000,000円を借り入れた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 3,000,000 | 借入金 | 3,000,000 |
現金という資産が3,000,000円増加します。資産の増加は借方に記入するので、『(借)現金3,000,000』となります。借入金という負債が3,000,000円増加します。負債の増加は貸方に記入するので、『(貸)借入金3,000,000』となります。
具体例3:「(借)資産の増加/(貸)資本の増加」
元入れ(出資)
元入れとは、事業主自身が自分の企業に資金を提供することを指します。これにより、資産が増加し、資本も増加します。
例題
現金1,000,000円を元入れして開業した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 1,000,000 | 資本金 | 1,000,000 |
現金という資産が1,000,000円増加します。資産の増加は借方に記入するので、『(借)現金1,000,000』となります。資本金という資本が1,000,000円増加します。資本の増加は貸方に記入するので、『(貸)資本金1,000,000』となります。
まとめ
仕訳は簿記の基本で、取引を帳簿に正確に記録するための重要な手続きです。
仕訳を理解することで、簿記全体の学習が効率よく進みます。
取引における「借方」と「貸方」の関係をしっかり覚え、資産、負債、資本の増減を正しく理解することが重要です。
特に、仕訳のパターンには資産に関するものが多く、まずは資産に注目することで、ほとんどの仕訳を把握できます。
具体的な取引例を通じて、「資産の増減」「負債や資本の増減」の仕訳を覚えることが大切です。