支配獲得後の追加取得とは、親会社が子会社の支配を獲得した後に、子会社株式を追加取得することをいいます。
この記事では、支配獲得後に子会社株式の追加取得をした場合について解説します。
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支配獲得後の追加取得の会計処理
子会社株式の追加取得は非支配株主から株式を取得したことを意味します。そのため、追加取得分に相当する額を非支配株主持分から減額し、追加取得した子会社株式と相殺します。
相殺時に生じた差額は、資本剰余金の増減として処理します。
仕訳パターン
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
非支配株主持分 | xxx ※1 | 関係会社株式 | xxx ※2 |
資本剰余金 | xxx ※3 |
※1 追加取得時の子会社の純資産額(評価差額を含む)×追加取得比率
※2 追加取得額
※3 差額
具体例
次の資料に基づき、x2年3月31日における連結修正仕訳を示しなさい。
<資料1>
P社はx1年3月31日にS社株式600株(発行済み株式数の60%)を300,000円で取得し、S社を連結子会社とした。さらに、x2年3月31日にS社株式100株(発行済み株式数の10%)を51,000円で追加取得し、合せて70%となった。
評価差額については法定実効税率を30%として税効果会計を適用する。のれんは発生年度の翌年から20年間で均等償却する。
<資料2>
S社株式の時価
x1年3月31日:500円
x2年3月31日:510円
<資料3>
S社は簿価100,000円の土地を保有している。x1年3月31日における時価は120,000円で、x2年3月31日における時価は130,000円である。
<資料4>
支配獲得日(x1年3月31日)におけるS社の純資産は、資本金300,000円、資本剰余金40,000円、利益剰余金50,000円であった。
<資料5>
x2年3月31日における貸借対照表(単位:円)
借方 | P社 | S社 | 貸方 | P社 | S社 |
現金預金 | 1,000,000 | 500,000 | 買掛金 | 751,000 | 150,000 |
土地 | 500,000 | 100,000 | 借入金 | 100,000 | 50,000 |
S社株式 | 351,000 | 資本金 | 700,000 | 300,000 | |
資本剰余金 | 200,000 | 40,000 | |||
利益剰余金 | 100,000 | 60,000 | |||
合計 | 1,851,000 | 600,000 | 合計 | 1,851,000 | 600,000 |
<資料6>
S社の当期純利益は10,000円である。なお、S社は剰余金の配当2,000円を行っている。
【解答・解説】
(1) 子会社の資産・負債の時価評価
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
土地 | 20,000 ※1 | 繰延税金負債 | 6,000 ※2 |
評価差額 | 14,000 ※3 |
※1 土地の時価120,000円-土地の簿価100,000円=20,000円
※2 20,000円×30%=6,000円
※3 20,000円-6,000円=14,000円
支配獲得日(x1年3月31日)の土地の時価120,000円で評価します。追加取得時(x2年3月31日)の時価で評価しないように注意してください。
(2) 開始仕訳(投資と資本の相殺消去)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
資本金 | 300,000 ※1 | S社株式 | 300,000 ※3 |
資本剰余金 | 40,000 ※1 | 非支配株主持分 | 161,600 ※4 |
利益剰余金 | 50,000 ※1 | ||
評価差額 | 14,000 ※2 | ||
のれん | 57,600 ※5 |
※1 資料4の金額
※2 上記(1)の金額
※3 支配獲得日(x1年3月31日)の取得原価
※4 当期首残高:(300,000円+40,000円+50,000円+14,000円)×40%=161,600円
※5 差額
非支配株主持分はx2年3月31日の追加取得を考慮する前の40%(1-60%)で計算します。
(3) のれん償却
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
のれん償却額 | 2,880 ※1 | のれん | 2,880 |
※1 57,600円÷20年=2,880円
(4) 子会社の当期純利益の按分
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
非支配株主に帰属する当期純損益 | 4,000 ※1 | 非支配株主持分 | 4,000 |
※1 10,000円×40%=4,000円(当期変動額)
追加取得が行われたのは当期末なので、当期純利益の按分は追加取得前の持分比率で計算します。
(5) 子会社の剰余金の配当
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
非支配株主持分 | 800 | 利益剰余金 | 2,000 |
受取配当金 | 1,200 |
※ 2,000円×40%=800円(当期変動額)
※ 2,000円×60%=1,200円
追加取得が行われたのは当期末なので、子会社の剰余金の配当は追加取得前の持分比率で計算します。
(6) 追加取得
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
非支配株主持分 | 41,400 ※1 | 関係会社株式 | 51,000 ※2 |
資本剰余金 | 9,600 ※3 |
※1 (300,000円+40,000円+60,000円+14,000円)×10%=41,400円(当期変動額)
※2 x2年3月31日の追加取得額
※3 差額
まとめ
- 支配獲得後に子会社株式の追加取得をした場合は、追加取得分に相当する額を非支配株主持分から減額し、追加取得した子会社株式と相殺する。
- 相殺時に生じた差額は、「資本剰余金」の増減として処理する。
- 非支配株主持分の減少額は、追加取得時の子会社の純資産額(評価差額を含む)×追加取得比率で算定できる。
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