この記事では、SuicaやPASMOなどの交通系電子マネー(ICカード)に関する会計処理について解説します。
目次
チャージしたとき
Suicaなどにチャージしたときの会計処理は、原則的な方法と簡便的な方法があります。
原則的な方法
原則的な方法では、チャージした金額を「貯蔵品」勘定で処理します。
現金を貯蔵品(Suicaなど)に移動するだけなので、消費税は関係ありません。
<具体例>
現金5,000円をSuicaにチャージした。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
貯蔵品 ※1 | 5,000 | 現金 | 5,000 | Suicaチャージ |
※1 「貯蔵品」ではなく「前払金」などの勘定科目で処理することも認められています。
簡便的な方法
継続適用を条件に、チャージした時に全額を費用に計上することも認められています。
この場合、チャージした時に消費税の課税取引として処理します。
継続適用とは、ずっと同じ方法で会計処理することをいいます。
<具体例>
現金5,000円をSuicaにチャージした。
税込み方式
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
旅費交通費 | 5,000 | 現金 | 5,000 | Suicaチャージ |
税抜き方式
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
旅費交通費 | 4,545 ※1 | 現金 | 5,000 | Suicaチャージ |
仮払消費税等 | 455 ※2 |
※1 5,000円÷1.1=4,545円(円未満切り捨て)
※2 5,000円-4,545円=455円
Suicaを新規作成したとき(デポジット発生時)
Suicaなどを新しく作った場合の会計処理は、原則的な方法と簡便的な方法があります。
原則的な方法
原則的な方法では、デポジットを「預け金」勘定で処理し、チャージした金額を「貯蔵品」勘定で処理します。
この場合、消費税は関係ありません。
<具体例>
新しくSuicaを作成し、現金5,000円(デポジット500円を含む)をチャージした。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
貯蔵品 ※1 | 4,500 | 現金 | 5,000 | Suicaチャージ |
預け金 | 500 |
※1 「貯蔵品」ではなく「前払金」などの勘定科目で処理することも認められています。
「預け金」は流動資産です。「預り金(流動負債)」と混同しないように注意してください。
簡便的な方法
継続適用を条件に、デポジットを費用に計上することも認められています。
この場合、Suicaなどを新規作成したときに消費税の課税取引として処理します。
<具体例>
新しくSuicaを作成し、現金5,000円(デポジット500円を含む)をチャージした。
税込み方式
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
旅費交通費 | 5,000 | 現金 | 5,000 | Suicaチャージ |
税抜き方式
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
旅費交通費 | 4,545 ※1 | 現金 | 5,000 | Suicaチャージ |
仮払消費税等 | 455 ※2 |
※1 5,000円÷1.1=4,545円(円未満切り捨て)
※2 5,000円-4,545円=455円
Suicaを使ったとき
チャージしたときに原則的な方法で処理している場合と簡便的な方法で処理している場合とで、Suica使用時の会計処理が異なります。
原則的な方法
チャージしたときに原則的な方法で処理している場合には、Suica使用時に「貯蔵品」から「旅費交通費」などの勘定科目に振り替えます。
なお、原則的な方法ではSuica使用時に消費税の課税取引として処理します。
<具体例1>
電車賃550円をSuicaで支払った。
税込み方式
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
旅費交通費 | 550 | 貯蔵品 ※1 | 550 | 電車代 |
※1 チャージしたときに「前払金」で処理している場合は、「前払金」で処理します。
税抜き方式
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
旅費交通費 | 500 ※1 | 貯蔵品 ※3 | 550 | 電車代 |
仮払消費税等 | 50 ※2 |
※1 550円÷1.1=500円
※2 550円-500円=50円
※3 チャージしたときに「前払金」で処理している場合は、「前払金」で処理します。
<具体例2>
事務所で使用する文房具1,100円をSuicaで購入した。
税込み方式
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
事務用消耗品費 | 1,100 | 貯蔵品 ※1 | 1,100 | 文房具代 |
※1 チャージしたときに「前払金」で処理している場合は、「前払金」で処理します。
税抜き方式
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
事務用消耗品費 | 1,000 ※1 | 貯蔵品 ※3 | 550 | 文房具代 |
仮払消費税等 | 100 ※2 |
※1 1,100円÷1.1=1,000円
※2 1.100円-1,000円=100円
※3 チャージしたときに「前払金」で処理している場合は、「前払金」で処理します。
簡便的な方法
チャージしたときに簡便的な方法で処理している場合には、チャージの時点で「旅費交通費」に計上しているのでSuica使用時の仕訳は不要です。
ただし、Suicaを旅費交通費以外の用途に使用した場合には、「旅費交通費」から適切な勘定科目に振り替える必要があります。
<具体例1>
電車賃550円をSuicaで支払った。
仕訳不要 |
<具体例2>
事務所で使用する文房具1,100円をSuicaで購入した。
税込み方式
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
事務用消耗品費 | 1,100 | 旅費交通費 | 1,100 | 科目振替 文房具代 |
税抜き方式
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
事務用消耗品費 | 1,000 ※1 | 旅費交通費 | 1,000 | 科目振替 文房具代 |
※1 1,100÷1.1=1,000円
「旅費交通費」を「事務用消耗品費」に振り替えるだけなので、仮払消費税等100円に関する仕訳は不要です。
Suicaをみどりの窓口に返却したとき
みどりの窓口でSuicaなどを返却すると、カード残額から手数料を控除した金額とデポジットが返金されます。
なお、カード残額が払いもどし手数料以下の場合は、デポジット(500円)のみが返金されます。
Suicaなどをみどりの窓口に返却したときの会計処理は、原則的な方法と簡便的な方法があります。
原則的な方法
原則的な方法では、デポジット(預け金)の取り崩しをします。払いもどし手数料については、カード残額によって3パターンあります。
<具体例1>
・カード残額1,000円の場合
みどりの窓口でSuicaを返却し、残額1,000円から手数料220円(税込み)が差し引かれた780円とデポジット500円が返金された。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
現金 | 1,280 ※1 | 貯蔵品 | 1,000 ※2 | Suica返却 |
支払手数料 | 220 | 預け金 | 500 ※3 |
※1 780円+500円=1,280円
※2 カード残額
※3 デポジット
<具体例2>
・カード残額150円の場合
みどりの窓口でSuicaを返却し、カード残額が150円だったのでデポジット500円のみが返金された。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
現金 | 500 ※1 | 預け金 | 500 ※1 | Suica返却 |
支払手数料 | 150 ※2 | 貯蔵品 | 150 ※2 |
※1 デポジット
※2 カード残額
カード残額が220円(払いもどし手数料)以下なので、カード残額が支払手数料(税込み)になります。
<具体例3>
・カード残額0円の場合
みどりの窓口でSuicaを返却し、カード残高が0円だったのでデポジット500円のみが返金された。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
現金 | 500 | 預け金 | 500 ※1 | Suica返却 |
※1 デポジット
カード残額が0円なので、払いもどし手数料は生じません。
簡便的な方法
Suicaを作成した時に、デポジットを旅費交通費として処理する簡便的な方法を採用した場合、デポジット相当額を雑収入に計上します。
なお、デポジット相当額を旅費交通費の減額として処理することも認められています。
<具体例1>
・カード残額1,000円の場合
みどりの窓口でSuicaを返却し、残高1,000円から手数料220円が差し引かれた780円とデポジット500円が返金された。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
現金 | 1,280 ※1 | 雑収入 ※2 | 1,500 ※3 | Suica返却 |
支払手数料 | 220 |
※1 780円+500円=1,280円
※2 「旅費交通費」でも可。
※3 カード残額1,000円+デポジット500円=1,500円
<具体例2>
・カード残額150円の場合
みどりの窓口でSuicaを返却し、カード残額が150円だったのでデポジット500円のみが返金された。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
現金 | 500 ※1 | 雑収入 ※2 | 650 ※3 | Suica返却 |
支払手数料 | 150 ※4 |
※1 デポジット
※2 「旅費交通費」でも可。
※3 カード残額150円+デポジット500円=650円
※4 カード残額
<具体例3>
・カード残額0円の場合
みどりの窓口でSuicaを返却し、カード残額が0円だったのでデポジット500円のみが返金された。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
現金 | 500 | 雑収入 ※1 | 500 ※2 | Suica返却 |
※1 デポジット
※2 「旅費交通費」でも可。
カード残額が0円なので、払いもどし手数料は生じません。
決算整理仕訳
チャージしたときに原則的な方法で処理している場合と簡便的な方法で処理している場合とで、決算整理仕訳の会計処理が異なります。
原則的な方法
原則的な方法では、Suicaの残額と「貯蔵品」勘定の金額が一致しているので、決算整理仕訳は不要です。
簡便的な方法
簡便的な方法では、Suicaにチャージした時点で全額「旅費交通費」で記帳しているので、決算時にカード残額を確認して、残額を「旅費交通費」から「貯蔵品」に振り替えます。
そして、翌期首に再振替仕訳を行います。
<具体例>
・決算時の仕訳
決算時にSuicaの残額を確認したところ3,000円だった。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
貯蔵品 | 3,000 | 旅費交通費 | 3,000 | 期末振替 |
・翌期首の仕訳
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
旅費交通費 | 3,000 | 貯蔵品 | 3,000 | 期首振替 |
まとめ
SuicaやPASMOなどの交通系ICカードの会計処理は、原則的な方法と簡便的な方法があり、使用する勘定科目も会社の方針によって異なります。
経理担当者は、会社がどの方法を採用しているのか確認しておくことが大切です。
Suicaなどは券売機で履歴を印字できるので、保管しておくと安心です。