試験全体の難易度はバランスが良好で、商業簿記と工業簿記がやや難しく、会計学と原価計算は比較的易しめという構成でした。これにより、受験生は実力を発揮しやすく、安定した得点が狙いやすい設計になっていると感じました。
商業簿記ではひねりを加えた問題が出題され、冷静に部分点を狙う戦略が求められました。会計学と原価計算は基礎的な内容が多く、高得点を目指しやすい科目です。
目次
商業簿記
- 難易度: 難しめ(複数のひねりがあり、難易度は高いが良問)
- ボリューム: 多め(計算量が多く、細かいポイントが多い)
- 目標点数: 15点(6割を目指す)
- 解説
第168回の商業簿記は、基本論点を中心に、少しひねりのある問題が多く、思ったよりも解きにくかった印象です。しかし、全体的に見れば良問が多く、普段の学習の成果が試される内容でした。
難しさとしては、問題文の読み取りに注意を要する部分があり、特に「商品売買の収益認識基準(リベート)」や「検収基準」に関する問題では、思わぬ難しさがありました。これらの問題は初見では戸惑う部分もありましたが、しっかりと戦略を立てることで対応可能でした。 - 解答戦略
計算量が多いため、時間配分を意識して進める。最初は難易度が高い問題やひねりの強い問題(例:特殊商品売買や為替予約など)を後回しにし、まずは確実に解ける問題に集中する。
こうすることで、時間内に解ける範囲を確保し、部分点を効率よく積み上げられる。40分以内に解答を終え、余った時間で難しい問題に取り組み、さらに部分点を狙う。
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会計学
- 難易度: やや易しめ
- 分量: 少なめ(理論5分、計算25分)
- 目標点数: 21点
- 解説
第168回日商簿記1級の会計学では、理論問題と計算問題がバランスよく出題されました。特に理論問題では、収益認識基準や減損会計、企業結合会計に関する知識が試されました。
収益認識基準については、契約に関連する履行義務の識別や進捗度の見直しに関する問題が難易度が高めでした。減損会計や企業結合会計では、過去の出題範囲に基づいた標準的な問題が多かったものの、計算問題では細かい数字の取り扱いに注意が必要です。第1問: 理論
比較的易しい問題で、特別な対策なしでも普段の勉強で十分対応可能な内容でした。収益認識基準や減損会計に関する基本的な論点が中心で、4問中3問は確実に取りたいところです。第2問: 連結会計
成果連結なし、資本連結のみの基本的な問題が出題されました。持分法や段階取得、売却なども出題されましたが、全体的に基礎的な内容が多く、比較的取りやすかったと思います。
ただし、ケアレスミスには十分注意が必要です。計算問題では、細かい数字や評価差額の取り扱いに注意を払いながら進めることが重要です。 - 解答戦略
理論問題では、基礎的な定義や考え方をしっかり押さえ、収益認識基準や減損会計、企業結合会計の応用論点にも対応できるように学習しておくことが重要です。計算問題では、連結会計における基本的な知識を元に、進捗度や資本剰余金の変動に関する細かい点に注意を払いながら進めましょう。
また、ケアレスミスを防ぐために見直しをしっかりと行うことが成功のカギとなります。
工業簿記
- 難易度: 普通〜やや難しめ
- 分量: 少し多め。計算量が多く、全体的に時間がかかる。
- 目標点数: 15点
- 解説
工業簿記は計算問題が多く、特に数値が細かいため、丁寧にミスなく計算を進めることが重要でした。全体として良問が多かったものの、仕訳問題やT勘定の流れ、予算差異の計算などで得点が伸びにくかったかもしれません。
問題全体は費目別計算の王道の問題で、特に仕訳問題やT勘定に関しては、2級レベルの知識で解ける内容ですが、細かい数値の取り扱いや計算ミスが多く、時間内に解ききるためには戦略的に問題を解くことが求められました。 - 解答戦略
まず、問題全体を俯瞰して、計算量が多いが難易度は比較的普通の問題と把握します。まずは計算量が少なく比較的簡単な問題から取り組み、時間が余った時に難易度の高い問題に手をつける戦略が有効です。問1: 材料費会計
材料費会計は計算量が多く面倒な部分もありますが、最初に取り組んでも問題ありません。資料を正確に読み取り、予定消費価格と実際の消費を比較する計算をしっかり行いましょう。問2: 労務費会計
賃金・給料の勘定を扱うこの問題は計算量が少なく、比較的簡単な問題です。まずはこちらを解いてしまい、次に進むのが良いでしょう。問3: 製造間接費の差異分析
製造間接費の差異分析は、操業度差異と予算差異の計算に注意が必要です。特に、操業度差異は固定費率や基準操業度、実際操業度をもとに簡単に計算できる部分があるため、早めに解答して時間を節約します。問4: 当月製造費用の計算
当月製造費用の計算は、材料費、労務費、製造間接費の予定消費価格や配賦額を使って計算します。問題自体は解きやすいので、後回しにせず最初に解答しておくと良いでしょう。 - 配点調整の可能性
点数が伸びにくい問題(仕訳問題、予算差異など)については配点が低めに設定される可能性があり、得意な箇所(計算問題、標準原価計算)での配点が高くなるかもしれません。
原価計算
- 難易度: 理論問題は普通、計算問題は易しい
- 分量: 普通
- 目標点数: 20点
- 解説
第1問: 理論問題
①と②は標準的な問題で、過去の実績データに基づく原価予測や固変分解に関する問題でした。難易度としては普通で、特に難しい点はありませんでした。③と④については、スクールによって解答が分かれ、悩ましい問題でした。
特に③の設備投資や生産方法の変更に関連する意思決定や、④の連続的な原価概念に関する問題は、国語的な要素が強く、管理会計としての重要性に疑問を感じる内容であったため、悩む受験者が多かったと思います。第2問: 計算問題(CVP分析、業務的意思決定)
非常に基本的な問題で、簿記2級レベルの内容です。特に貢献利益や営業利益の計算、経営レバレッジに関する問題は、問題文に従って適切に式を立てることで解けます。この部分でしっかり得点を取らないと、合否に影響が出る可能性があります。
計算は丁寧に行い、特に経営レバレッジ係数や損益分岐点売上高の計算方法を押さえておくと良いです。 - 解答戦略
理論問題では、過去の実績データを基にした原価予測や固変分解など、基本的な管理会計の概念が出題されます。特に③や④の問題では、設備投資や生産方法の変更に関する意思決定を理解して解答する必要があります。
焦らずに問題文を丁寧に読み、論理的に解答を導きましょう。③については外的要因や計画的な変更が絡んでいますので、どの選択肢が最も関連性が高いかを意識しながら解くことがポイントです。
④では、原価概念が連続的に変動することが示唆されているため、その背景を正確に捉えて選択肢を絞り込みましょう。計算問題では、特にCVP分析や経営レバレッジに関する問題に注力しましょう。損益分岐点売上高や貢献利益の計算方法をしっかり押さえておくことが重要です。基本的な数式を正確に理解していれば、高得点を狙えます。
業務的意思決定の問題では、臨時注文に関連する内容が出題されており、余剰生産能力や固定費の影響を見極めながら計算を行うことが求められます。
特に、臨時注文の受注可能数を調整する問題では、貢献利益を最大化するために、どの選択が最も利益を生むか冷静に考え、必要なデータを活用しながら解答していくことが重要です。
総評
全体的にバランスの取れた試験でした。商業簿記と工業簿記の難易度が高めでしたが、会計学と原価計算で得点を稼げる機会が多く、全体として安定した得点を狙いやすい構成でした。各科目ごとの戦略をしっかり立て、難易度の低い部分で得点を伸ばすことが重要です。