委託買付とは、商品の買い付けを他者に委託することです。買付業務を委託した人を委託者といいます。
受託買付とは、商品の買い付けを委託されることです。買付業務を委託された人を受託者といいます。
委託買付、受託買付は第72回税理士試験の簿記論で出題されました。
この記事では、委託買付と受託買付の仕訳、会計処理について解説します。
目次
委託買付の会計処理
手付金の支払い時
委託者が受託者に商品代金の手付金を支払ったときは、委託買付勘定で処理します。
例題１
当社は、受託者に商品の仕入を依頼し、手付金として100,000円を現金で支払った。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 委託買付 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
税理士試験や簿記検定では、委託買付勘定の指示や、残高試算表に委託買付が書かれている場合は委託買付勘定で仕訳をします。
委託買付勘定を使用しない場合は、「前払金」「買掛金」などで仕訳をします。
受託者が商品を買い付けた時
委託者側は「仕訳なし」です。
商品の受取りと仕切精算書の受領時
買い付けの委託をした商品を受け取ったときは、仕入勘定で処理します。
海外などの遠隔地からの仕入れでは、商品を受け取る前に買付計算書と貨物代表証券を受領することがあります。この場合には、買付計算書と貨物代表証券の受領時に未着品勘定で処理し、商品を受け取ったときに未着品勘定から仕入勘定へ振り替えます。
例題２
当社は、買付代理店（受託者）から下記の買付計算書とともに商品を受け取った。
＜買付計算書＞
買付代金：500,000円
諸掛：10,000円
買付手数料：5,000円
前受金：－100,000円
請求額：415,000円
【解答・解説】
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 仕入 | 515,000 ※１ | 委託買付 | 515,000 |
※１ 買付代金500,000円＋諸掛10,000円＋買付手数料5,000円＝515,000円
買付計算書に記載されている、買付にかかった諸掛や買付手数料などは、すべて仕入勘定に含めます。
- 買付高：受託者が買い付けた金額
- 諸掛：受託者が買い付けをするために立て替えた費用
- 買付手数料：受託者がもらう手数
- 前受金：委託者が支払った前払金
- 請求額：委託者が受託者に支払う金額
代金の決済時
委託買付勘定の残高は受託者に対する要支払額なので、代金を決済したときは委託買付勘定を減額します。
例題３
当社は、買付計算書の残金405,000円を受託者の当座預金口座に現金で振り込んだ。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 委託買付 | 405,000 | 現金 | 405,000 |
委託買付勘定を使用しない場合
手付金の支払い時
委託者が受託者に商品代金の手付金を支払ったときは、前払金勘定で記載します。
例題１
当社は、受託者に商品の仕入を依頼し、手付金として100,000円を現金で支払った。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 前払金 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
受託者が商品を買い付けた時
委託者側は「仕訳なし」です。
商品の受取りと仕切精算書の受領時
買い付けの委託をした商品を受け取ったときは、仕入勘定で処理し、貸方は買掛金などで処理します。
例題２
当社は、買付代理店（受託者）から下記の買付計算書とともに商品を受け取った。
＜買付計算書＞
買付代金：500,000円
諸掛：10,000円
買付手数料：5,000円
前受金：－100,000円
請求額：415,000円
【解答・解説】
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 仕入 | 515,000 ※１ | 前払金 | 100,000 |
| 買掛金 | 415,000 |
※１ 買付代金500,000円＋諸掛10,000円＋買付手数料5,000円＝515,000円
代金の決済時
委託買付勘定の残高は受託者に対する要支払額なので、代金を決済したときは買掛金勘定を減額します。
例題３
当社は、買付計算書の残金405,000円を受託者の当座預金口座に現金で振り込んだ。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 買掛金 | 405,000 | 現金 | 405,000 |
受託買付の会計処理
手付金の受取り時
受託者が委託者から商品代金の手付金を受け取ったときは、受託買付勘定で処理します。
例題１
当社は、委託者から商品の買い付けを依頼され、手付金として100,000円を現金で受け取った。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 現金 | 100,000 | 受託買付 ※１ | 100,000 |
受託者が商品を買い付けた時
受託者が商品の買い付けを行ったときは受託買付勘定で処理します。
委託者が直接仕入先に代金を支払う場合は、受託者側の仕訳はありません。
例題２
当社は、委託者から依頼された商品を購入し、仕入先に500,000円を当座預金から振り込んだ。なお、買い付けに係る諸経費10,000円は現金で支払った。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 受託買付 | 510,000 ※１ | 当座預金 | 500,000 |
| 現金 | 10,000 |
※１ 買付代金500,000円＋諸経費10,000円＝510,000円
買付商品の引渡しと仕切精算書の発送時
受託者が商品を発送すると同時に、仕切精算書（買付計算書）を作成し、委託者に送付します。
例題３
当社は買付計算書を作成し、買付商品とともに委託者に発送した。
＜買付計算書＞
買付代金：500,000円
諸掛：10,000円
買付手数料：5,000円
前受金：－100,000円
請求額：415,000円
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 受託買付 | 5,000 | 受取手数料 | 5,000 |
買付商品と仕切精算書の発送時に、買付手数料（受取手数料）の計上を行います。
残金の受取り時
残金を受け取ったときは受託買付勘定で処理し、これまでの債権・債務の残高を決済します。
例題４
買付計算書の残金415,000円が委託者から当社の当座預金口座に振り込まれた。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 当座預金 | 415,000 | 受託買付 | 415,000 |
受託買付勘定を使用しない場合
手付金の受取り時
受託者が委託者から商品代金の手付金を受け取ったときは、預り金勘定で記録します。
例題１
当社は、委託者から商品の買い付けを依頼され、手付金として100,000円を現金で受け取った。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 現金 | 100,000 | 預り金 | 100,000 |
受託者が商品を買い付けた時
受託者が商品の買い付けを行ったときは、立替金勘定で処理します。
委託者が直接仕入先に代金を支払う場合は、受託者側の仕訳はありません。
例題２
当社は、委託者から依頼された商品を購入し、仕入先に500,000円を当座預金から振り込んだ。なお、買い付けに係る諸経費10,000円は現金で支払った。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 預り金 | 100,000 ※１ | 当座 | 500,000 |
| 立替金 | 410,000 | 現金 | 10,000 |
※１ 例題１の預り金
買付商品の引渡しと仕切精算書の発送時
受託者が商品を発送すると同時に、仕切精算書（買付計算書）を作成し、委託者に送付します。受託買付勘定を使用しない場合は、未収入金勘定を使用します。
例題３
当社は買付計算書を作成し、買付商品とともに委託者に発送した。
＜買付計算書＞
買付代金：500,000円
諸掛：10,000円
買付手数料：5,000円
前受金：－100,000円
請求額：415,000円
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 未収入金 | 5,000 | 受取手数料 | 5,000 |
買付商品と仕切精算書の発送時に、買付手数料（受取手数料）の計上を行います。
残金の受取り時
残金を受け取ったときは受託買付勘定で処理し、これまでの債権・債務の残高を決済します。
例題４
買付計算書の残金415,000円が委託者から当社の当座預金口座に振り込まれた。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 当座預金 | 415,000 | 立替金 | 410,000 |
| 未収入金 | 5,000 |
委託販売・受託販売との違い
委託販売とは、他者（受託者）に自社商品の販売を委託する販売形態です。
委託者は、この販売に関するすべての費用を負担し、受託者に対価として手数料を支払います。
受託販売とは、他者（委託者）の商品を代わりに販売することで、手数料を受け取る販売形態です。
受託販売に伴って発生する収益と費用はすべて委託者に帰属し、受託者側で発生する損益は受取手数料のみです。
したがって、委託買付・受託買付と委託販売・受託販売の違いは下記のとおりです。
| 委託販売：他者に「販売」を委託すること | 受託販売：他者に「販売」を委託されること |
| 委託買付：他者に「仕入」を委託すること | 受託買付：他者に「仕入」を委託されること |
まとめ
- 委託買付は、他者に「仕入」を委託することで、手付金を支払った時に借方に計上し、商品の受取り・仕切精算書の受領時に貸方に計上する。
- 受託買付は、他者に「仕入」を委託されることで、手付金を受け取った時に貸方に計上し、買付商品の引渡し・仕切精算書の発送時に借方に計上する。
- 委託買付勘定や受託買付勘定を使用しない会計処理の方法もある。