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消費税法

法人設立時の資本金と資本準備金が納税義務の判定に与える影響について解説

2023年10月30日

法人を新たに設立した場合、原則として、設立日から2期目の終わりまで、消費税を支払う義務が免除される特典があります。

このルールは、設立直後の法人が規模が小さいことを考慮し、消費税の管理や手続きによる負担を軽減するために設けられています。

ただし、すべての法人がこの免除を受けられるわけではありません。

事業規模や売上が一定基準を超えると、消費税免除が適用されなくなることがあります。このルールは「納税義務の免除の特例」として定められています。

この記事では、法人設立時の資本金と資本準備金が納税義務の判定に与える影響について詳しく解説します。

 

小規模事業者に係る納税義務の免除(原則)

消費税を支払う義務があるかどうかを決める基準は、消費税法第9条で定められています。この法律によると、基本的に、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の場合、消費税を支払う義務は免除されます。

なお、「基準期間」とは、法人の場合、その事業年度の前々事業年度を指します。法人が新設された場合、設立1期目や2期目には「前々事業年度」が存在しないため、原則として消費税免除が適用されます。

消費税法第9条では次のように規定されています。

事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

消費税法第9条

 

新設法人の納税義務の免除の特例

新設法人が消費税免除を受けられるかどうかは、その法人の資本金額で判定します。消費税法第12条の2では、その事業年度の基準期間がない法人の資本金が1,000万円以上である場合、消費税免除が適用されないことが明記されています。

これは、資本金が1,000万円以上である法人は、事業規模が相応に大きいため、事務負担の軽減を考慮する必要がないとされているためです。

消費税法第12条の2では次のように規定されています。

その事業年度の基準期間がない法人(中略)のうち、当該事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が千万円以上である法人(以下この項及び次項において「新設法人」という。)については、当該新設法人の基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間(中略)における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、第九条第一項本文の規定(小規模事業者に係るの納税義務の免除)は、適用しない。

消費税法第12条の2

つまり、その事業年度の基準期間がない法人であっても期首資本金が1,000万円以上であれば、消費税の免除は受けられず、消費税を納める義務が生じることになります。

 

設立時の資本金と準備金が納税義務に与える影響

消費税免除の特例が適用されるかどうかは、法人設立時の資本金が1,000万円以上かどうかで判断されます。資本金とは、法人設立時に株主から集めたお金のことです。会社法第445条では、資本金の額の計上方法について規定されています。

この規定により、払い込みを受けた金額の最低でも2分の1以上を資本金として計上し、残りの額は資本準備金として計上することが認められています。

会社法第445条には次のように記されています。

株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。
2 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。
3 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。

会社法第445条

このように、資本金の額は全額を資本金として計上する必要はなく、最小限度の額を資本金として計上し、残りの額を資本準備金として計上することができます。この場合、資本準備金の額は消費税免除の特例には影響を与えません。

「新設法人の納税義務の免除の特例」の適用の可否を判断する際には、資本金の額のみが考慮されるため、資本準備金の額は影響を与えない点に注意が必要です。

<例題1>

会社設立の際、1,900万円の払い込みを受けたため、950万円を資本金として計上し、残りの950万円を資本準備金として計上しました。

借方 金額 貸方 金額
現金預金 19,000,000 資本金 9,500,000
資本準備金 9,500,000

この場合、期首資本金は950万円となり、1,000万円未満となるため、新設法人には該当しません。したがって、小規模事業者に係る納税義務の免除が適用され、消費税の納税義務は免除されるため、免税事業者に該当します。

 

<例題2>

会社設立の際、1,900万円の払い込みを受けたため、1,000万円を資本金として計上し、残りの900万円を資本準備金として計上した。

借方 金額 貸方 金額
現金預金 19,000,000 資本金 10,000,000
資本準備金 9,000,000

この場合、期首資本金が1,000万円以上であるため、「新設法人の納税義務の免除の特例」が適用されます。したがって、消費税の納税義務は免除されず、課税事業者に該当します。

 

まとめ

法人の設立時に消費税免除を受けるためには、設立時の資本金が重要な基準となります。原則として、資本金が1,000万円未満であれば、設立から2期目の終わりまで「小規模事業者に係る納税義務の免除」が適用され、免税事業者となります。

一方、資本金が1,000万円以上の場合は「新設法人の納税義務の免除の特例」が適用され、課税事業者となります。

資本金は株主からの払い込み金額のうち、最低でも半分を資本金として計上し、残りを資本準備金として計上できますが、納税義務の判定には資本金のみが考慮され、資本準備金は影響を与えません。

そのため、資本準備金の額にかかわらず、資本金が1,000万円未満なら免税事業者、1,000万円以上なら課税事業者となります。

法人設立時には資本金の計上方法に十分注意が必要です。

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