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消費税法

インボイス制度で変わる!適格請求書発行事業者の義務とは?

2024年6月22日

令和5年10月1日から、消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が始まりました。

適格請求書(インボイス)は、適格請求書発行事業者として登録された課税事業者(消費税の納税義務がある事業者)のみが発行できます。

今回は、適格請求書発行事業者の登録を受けた場合に課される義務について解説します。

 

消費税の納税義務

消費税の納税義務は、すべての事業者に課せられるわけではなく、一定規模以下の事業者には免除されます。

納税義務が免除されている事業者は「免税事業者」、納税義務がある事業者は「課税事業者」と呼ばれます。

簡潔に説明すると、以下の条件に該当する場合は消費税を納める義務があります。

課税事業者となる場合

  1. 適格請求書発行事業者として登録している場合
  2. 基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合
    • 個人事業者:前々年の売上高が1,000万円を超えた場合
    • 法人:前々事業年度の売上高が1,000万円を超えた場合
  3. 消費税課税事業者選択届書を提出した場合
  4. 「納税義務の免除の特例」の適用を受ける場合

「納税義務の免除の特例」とは

「納税義務の免除の特例」は、特定の条件を満たした場合に消費税の納税義務が課される制度です。以下のような場合に適用されます。

  1. 特定期間における売上高が1,000万円を超えた場合
    • 個人事業者:前年の1月1日から6月30日までに売上高が1,000万円を超えた場合
    • 法人:前事業年度の上半期(1月1日~6月30日)に売上高が1,000万円を超えた場合
  2. 相続や合併などがあった場合
    • 事業が他の企業や個人に承継されると、新たな事業者にも消費税の納税義務が生じることがあります。

注意点

なお、適格請求書発行事業者として登録している場合、たとえ基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、納税義務は免除されません。

したがって、事業規模に関わらず、適格請求書発行事業者には消費税の納税義務が課せられます。

 

適格請求書の交付義務

適格請求書発行事業者は、商品やサービスを提供した相手方(課税事業者に限る)から適格請求書(インボイス)または適格簡易請求書(簡易インボイス)の交付を求められた場合、必ず交付しなければなりません。

免税取引、非課税取引、または不課税取引のみを行った場合には交付義務はありません。

さらに、課税事業者でない者(免税事業者や消費者)から交付を求められた場合も交付義務は生じません。

適格請求書(インボイス)または適格簡易請求書(簡易インボイス)の記載事項については、別の記事で詳しく解説しています。

 

電磁的記録

適格請求書(インボイス)または適格簡易請求書(簡易インボイス)については、これらの書類に記載すべき事項に関する電磁的記録(電子データ)を相手方に提供することができます(いわゆる「電子インボイス」などの提供)。

また、適格返還請求書(返還インボイス)についても、同様に「電磁的記録」を相手方に提供することができます。

「電磁的記録」とは、情報(データ)それ自体や記録に用いられる媒体のことではなく、一定の媒体上で使用できる情報が記録・保存された状態を指します。この情報は、一定の順序で読み出すことができるものです。例えば、情報がハードディスクやCD、DVD、磁気テープなどに記録・保存された状態が該当します。

 

適格返還請求書の交付義務

相手方(課税事業者に限る)に商品やサービスを提供した後、売上げに係る対価の返還等(返品、値引き、割戻しなど)を行った場合には、その相手方に対して適格返還請求書(返還インボイス)を交付する義務があります。

適格返還請求書(返還インボイス)の記載事項は以下の通りです。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 売上げに係る対価の返還等を行う年月日及びその売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日(適格請求書を交付した売上げに係るものについては、課税期間の範囲で一定の期間の記載で差し支えありません。)
  3. 売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
  4. 売上げに係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
  5. 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率

修正した適格請求書等の交付義務

適格請求書、適格簡易請求書、適格返還請求書の記載事項に誤りがあった場合、修正した書類を交付する義務があります。相手方が自ら記入・修正することは認められていません。

 

写し等の保存義務

適格請求書(インボイス)、適格簡易請求書(簡易インボイス)、適格返還請求書(返還インボイス)またはこれらを修正した書類を交付した場合、写し(コピー)または電子データを保存する必要があります。

なお、提供した電子データの保存については、原則として電子データのままで保存する必要がありますが、整然とした形式および明瞭な状態で紙に出力し、整理して保存することも認められます。

保存期間は原則として、その交付した日または提供した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地または事務所等の所在地に保存しなければなりません。

インボイス等の写しには保存義務がありますが、保存しなかった場合、消費税法には直接的な罰則規定はありません。

しかし、インボイス等の写しは法人税法や所得税法において国税関係書類として保存が求められます。

また、売上税額の計算方法に「積上げ計算」を採用している場合、その適用要件としてインボイス等の写しの保存が必要です。

税務調査などで保存の不備が発覚すると、「積上げ計算」が認められず、「割戻し計算」に基づいて修正申告を行わなければならない恐れがあります。

そのため、インボイス等の写しは必ず保存し、管理を怠らないようにしましょう。

 

適格請求書の交付義務が免除される取引

以下の取引については適格請求書(インボイス)の交付義務が免除されています。

  1. 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
  2. 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(1.に該当するものを除きます。)
  3. 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
  4. 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の取得
  5. 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
  6. 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
  7. 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
  8. 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
  9. 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

適格返還請求書の交付義務の免除

上記の「適格請求書の交付義務が免除される取引」について、売上げに係る対価の返還等があった場合には、適格請求書(インボイス)を交付していないため、適格返還請求書の交付義務はありません。

また、売上げに係る対価の返還等が税込1万円未満であれば、適格返還請求書の交付義務は免除されます。

 

まとめ

令和5年10月1日から施行されたインボイス制度により、適格請求書発行事業者には以下の義務があります。

  1. 消費税の納税義務
  2. 適格請求書または適格簡易請求書の交付義務
  3. 適格返還請求書の交付義務
  4. 修正した適格請求書等の交付義務
  5. 写し等の保存義務

適格請求書発行事業者は課税事業者として登録し、課税事業者に対して請求書を交付する義務があります。また、電子データでの提供も可能です。

これらの書類は所定の保存期間を守り、保存しなかった場合、税務調査で不備が発覚するリスクがあります。

なお、一定の取引についてはインボイスの交付義務が免除され、1万円未満の返還等には返還請求書の交付義務も免除されます。

インボイス制度に従い、適切な手続きを守ることが重要です。

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